赤と黒のクラッシュ

FBIたちは#名前2#と世祖が組織にいた人間だと知っています 「……」 「……」  組織から抜けたというのに届いた一通のメール。組織から抜けたのに生き残れたのは彼がこういう時にメールを送れるからか、と謎に納得しながらメールを開いた。  件名はキールという1単語のみ。本文にはキールという女は使えるのかどうか調べろという依頼が暗号文混じりに書かれていた。キール……水無怜奈というアナウンサーだが、彼女と接触した毛利探偵やノックだったイーサン本堂、現在行方不明であることなどからほとんど黒として見ているらしかった。 「世祖、これさぁ要するに確信を持った証拠もってこいってことだよな」 「うん」  流石にそれは……と思ったが世祖は気にしていなかった。水無怜奈がどうだろうと特に世祖の世界に関係はない。 「あのイーサン本堂って人さ、どこの人だったっけ」 「……カンパニー」 「CIAだっけ。そっかぁ。……組織ってさぁ、何であんなにノック多いんだろうなぁ」  そう言いながら#名前2#が指折り数え出す。実の所、ソシキニノックが多いのではない。ノックではない組織の人間が世祖のせいで使い物にならなくなったのと、ジンがスプリッツァーによる告発でヘマをした人間を粛清しまくったからである。へたな組織員よりもノックの方がスペックが高いというのだから世の中はままならないものだ。 「CIA……CIAねえ。そうだ、同じアメリカつながりでFBIに話してみようか」 「ん」  水無怜奈がFBIとコナンによって病院に匿われているのは二人とも知っている。あえて今まで話題に触れなかったのは赤井秀一という男が苦手だったからだった。  電話をかけると一回目では出てくれなかった。不在着信が入っていれば気づくだろうと待っていたらすぐにかけ直して来た。世祖の顔がぐっと歪む。 「ま、まあ非通知は心配になっても仕方ないだろ……」  なぜか#名前2#がフォローして電話をとった。 「誰だ」 「……#名前1##名前2#と、妹、です」 「君たちか。こちらは忙しいので用事によっては……、」 「水無怜奈のことです」  思わず早口に言うとぶちりと電話を切られた。ツーツーと無機質な音がしている。油のないブリキ人形のように首を動かし世祖を見詰めた#名前2#の顔は虚無感に襲われている。 「……いやぁ、嫌ってるから仕方ないけどさ。普通、礼儀ってあるよな? アメリカンってほんと何なの?」  アメリカ人を敵に回すようなことを言いながら#名前2#はスマホをソファーに放り投げて床に寝転がった。 「#名前2#ー」 「ぐえっ」  世祖が近寄ってきて胸板をまくらにするように寝ころんだ。ちょっと重たいが気にするほどではない。涼しい風も入ってきた。そのまま#名前2#は眠気に負けて眠ってしまった。  次の日には赤井の方から電話をかけてきた。バイト中で気づけなかったが午後に来ると連絡が入っている。これから帰っても間に合わなそうだと加州に家に行くように頼んだ。世祖と赤井の二人だけではきっと会話できないよなあと想像できた。  家に入るとソファーに座り書類を読み込む赤井とテーブルでスマホをいじる加州がいた。 「……ああ、#名前2#くんか。邪魔している」 「どーぞどーぞ、書類受け取りました? よかった、コーヒーいりますか? すみませんね、出迎えできなくて。あ、そうだ加州、世祖は?」 「トイレに閉じこもってる」 「はーい」  #名前2#がそのままキッチンの方へ向かうので赤井の方も音に釣られて視線を向けた。コーヒーミルでぎこぎこと粉を作っている。 「レトルトでもいいんだがな」 「結構うまいよ、#名前2#のコーヒー」  赤井の呟きに加州が返した。まさか返すとも思ってなかったので口を閉じる。カシュウと呼ばれた方は赤井の方を見て「コーヒー飲むでしょ?」と問いかける。 「……。もらえたなら、飲むが」 「飲めばいいじゃん」 「……」  さっきまでと雰囲気が別人のように話しかけてくる。何かあったのかと観察するように見ていたら「ああ、名前?」と切り出した。 「加州はあだ名だけど」 「そう、だったのか」 「俺の方からあだ名つけてるんですよ、刀に合わせた名前をね」  かたん、とコーヒーが置かれる。ほら加州のも、とテーブルにもカップが置かれた。 「世祖、真面目に立て込んでるんだな。ちょっと見てくる」 「行ってらっしゃい」  手元に置かれたブラックコーヒーを飲み込む。想定していたよりもうまかった。加州の方はまた何も話さなくなる。重苦しい雰囲気にコーヒーを飲んでさっさと退室することにした。  赤井さんが帰った後で加州も帰ろうかなと言いだした。折角だから飯食べてけよと誘うとごにょごにょ言いながらテーブルに戻った。 「今日のご飯はー?」 「加州の手作りパスタ―」 「はあ? 俺が作んの? そのために呼んだんじゃーー」 「いやー、折角だから料理してもらおうと思って」  キッチンに男二人が並びながら料理をする。野菜の皮むきをしながら「さっきの人さあ」と加州が話し始めた。 「うんー?」 「赤井秀一って、言ったよね。#名前2#、嫌いじゃなかった?」 「そうなんだけどさー。コナンと一緒に居ること多いし、頭も切れるからそっちに資料渡せばいいって判断した」 「本音を言うと?」 「本音だから、今のが! 流石に嫌がらせなんてしないし」 「そうだよねー、今は大人しくなったもんね#名前2#も」  やけに実感のこもった言い方に#名前2#も苦笑いを浮かべた。それは自分でも自覚がある。つんつんと世祖に上着を引っ張られた。 「まだ?」 「ご、ごめん……」  まだ下準備も終わっていないのだ。ふぅと息をついた世祖をおぶさり、適当なタオルで体をしばった。 「世祖、ここで見てな」 「うん」  その光景を見て加州は本丸での日々を思いだしてしまう。さっさとここから帰りたいなんて言ったら怒られそうだ。だが……。 「そろそろ、この生活も飽きてきたよね」 「カース?」 「ごめん、何でもない」