緋色の弾丸
リニアに乗るのを楽しみにしていたら、小五郎さんから連絡が来た。お前たちも乗るのか? と聞かれたということは、コナンたちも乗るのだろう。 「そうです」 「そうか……」 「事件が起きるかもしれないんですか?」 「あ、ああ……」 「なるほど。……でも、まあ、俺はそんなに」 「馬鹿野郎、子どもが何言ってるんだ! お前たちに何かあったら……」 「……。毛利さん、本当に。大丈夫ですから」 試乗会の前の説明会に行くと、コナンたちがいつものように待っていた。鈴木会長を助けたお礼にチケットをもらったらしい。俺と世祖は抽選が当たったと言えば、おぉーと賞賛の視線を浴びられた。三日月もスポンサーとしてチケットが用意されたのだが、今日は「めんどうだ」と言って来なかった。本来ならば来なければいけないはずだが、彼のワガママには慣れているのか陸奥守が代わりに来ていた。 「そいで? #名前2#たちが乗るあのリニアで事件が発生するかもしれないて話か?」 「うん……。そういうことらしい」 「逃げんとか?」 「いや、俺だってやりたくないけどさ」 「けど?」 「起こるって分かってるのに放置するのもできない……」 俺の言葉に陸奥守はけらけらと笑った。頑張れ頑張れ、と肩を叩かれたが他人事として笑ってるような気しかしない。 名古屋国際空港に行くと、三日月はいつものスーツ姿で登場した。そしてなぜか俺のチケットを持っていた。なんで……?? 「俺のボディーガードとして#名前2#のことを申請しておいた」 「お、おう……?」 「そうなるとチケットが一枚浮くだろう? 陸奥守を呼んでおいた」 「来たぞ!」 「三日月、お前、ほんと、お前さぁ……!!」 ちゃんと報連相してくれる!? とキレたが三日月はなんのその。全く話を聞いてくれなかった。毛利探偵はジョン社長のボディーガードらしい。俺を見てなんでここに居るんだよ、と口パクで聞かれたので三日月をぴっと指さしておいた。 「#名前2#、指でさすな」 「はいはい」 「折角久々に楽しめるんだぞ」 三日月はわりと普段の人生も謳歌している方だと思うが、黙っておいた。 コナンのことをじっと見つめる世祖は何やら電話での会話を読み取っているのかぐるぐるとした目が宙を見つめていた。怖いな、と陸奥が言う。俺もそう思ったが何も言わなかった。 まずは簡易検査を受けなければならないという。男女同室なのはありがたい。世祖がひとりで受けなければならないという自体は回避したかった。 世祖をかかえて名前を呼ばれるのを待っていたら、急に何か悪寒が襲った。ぐっと世祖が俺の頭を掴んで床に落とした。気絶させられるかと思った。とたんに、爆発音のような音が聞こえてなにか煙が出てきた。 「な、なんだこれ」 「ッッ、クエンチだ……」 「陸奥? え、お前大丈夫なの? 三日月は?」 「こっちだ」 「無事なんだな?」 「さすがに俺が動いていたら会社の方が怪しまれるからな。動けるとしたらお前たちの方だ」 「でも、このまま動いたんじゃ……」 「やられたフリをして犯人をおびき出すんだ。長谷部たちには話をつけてある」 「長谷ぇ?」 なんで長谷部がここに出てくるんだよ、と思ったが犯人の足音が聞こえてきた。倒れた振りをすると、誰かの足音が聞こえて男の人を引きずるような音がした。出ていく音が聞こえた瞬間、すぐに体を起こした。世祖と陸奥を連れて病室を出ると、すぐに駐車場へ向かえるように窓を開いた。 「なあ、みんなをあそこに置いても大丈夫なのか!?」 「世祖が未来視したから、大丈夫じゃ!」 「あっそう!」 それもまた連絡がねえんだよな、と思ったが何も言わないことにした。駐車場に飛び込むと、長谷部が既に車を用意して待っていた。その中にいたのは「沖矢さん!?」 慌てて三人で乗り込むとすぐに車が急発進した。本来ならば四人乗りの車である。世祖は俺の膝の上に乗せられた。 「……長谷」 「大丈夫、赤井の話は既に通してある。アラン・マッケンジーは沖野さんの旧友らしくてな。助けてこいという命令が下った」 「あ、はい……」 「ジョン社長も助ける予定だが、これまでの経歴から考えるとそこまで気にしなくてもいいとは思う」 「長谷」 「分かってる。助けられるなら二人とも、だ」 こんなことなら二手に別れたかった。俺の仏頂面が見えたのか、長谷部は「もう一台の車なら用意してある」と言い出した。 「ならっ」 「だが、もうひとつの勢力があると思ったんだ」 「いや、どういうことだよ……」 ピコン、とスマホに通知がくる。コナンからだった。ジョン社長がいなくなったという連絡だ。 「ジョン社長がいなくなったって連絡が来てた」 「ひとまずは彼を助けに行こう」 長谷部はなにを読み取っているのかなんの躊躇いもなく車を動かしていた。世祖がぼそぼそと何か言っているのを長谷部は一言一句聞き漏らさずに素直に動いているのだ。 誰も何も言わない状況で心配になったが、後ろについてきたバイクに陸奥が気づいた。 「なあ。あれはお前のところの妹じゃなか?」 「え?」 沖矢さんと一緒に後ろを見ると確かに見覚えのあるバイクとヘルメットが見えた。 「いたな、第三勢力が」 「どうする? ついてきてるけど」 「あの小僧と合流させればいい。どこかで止まるぞ」 「はいはい、了解」 倉庫について、わざと待つように車から降りて隠れていたら本当に世良真純たちが来た。後ろにいるのは、コナンが言っていたメアリーという少女だ。 「あれ、#名前2#さんと世祖ちゃん?」 「やっほ~」 「ど、どうしてここに!? あの爆発騒ぎに巻き込まれたんじゃなかったのか!?」 「世祖がぐずるからちょっとだけ逃げてたら、うまいこと避けられたんだよ。それより、そっちはどうしてここに?」 「あ、ああ……実は、ジョン社長が誘拐されるかもしれないって依頼がきてて」 「そっか。残念だけど、ここにジョン社長はいなかった。どこか別の場所にいるはずだ」 「わかった……」 「世良のねーちゃん! って、#名前2#さんと世祖!?」 「コナン、ジョン社長のことは追えるか?」 「う、うん」 「それじゃあとは任せた! 俺、別の用事があるから!」 「あ、ちょっと!! 待ってよ、#名前2#さん!!」 世祖をひっつかまえるとすぐにダッシュして車に逃げた。沖矢さんのもとに電話がかけられてきた。コナンからだ。二人が話し始めるのを見て、俺も長谷部に話しかけた。 「FBIが大きく関わってるから長谷たちも何かやるかと思ってたけど、こんなに仕事してくれるなんて思ってなかった」 「俺もだ」 「宗三の方はどうしてる?」 「リニアの方にいるはずだ」 「なんで!?」 「あの電動リニアに何か問題があったら困るって沖野さんに命じられていたんだ」 「詰め将棋みたいなことするじゃん……」 「長谷部、#名前2#くん。すまないが俺は別行動してもいいだろうか?」 「大丈夫です、やるべきことをやってください。あ、車がいるなら長谷は置いてきますけど……。とりあえず空港に戻りますね」 「君たちはどうする?」 「俺と世祖はリニアに行きます。ていうか、そうじゃないとコナンたちが危ないことしそうだし……」 「それは、」 「大丈夫、こっちも無茶はしませんって。えーっと陸奥は……」 「わしも#名前2#たちと行くが?」 「分かった、じゃあそれで」 空港に行って、すぐに二手に分かれた。世祖は俺が守るよりも、好きなことをさせていた方が危険にはなりにくい。嫌がるならそれまでだと思っていたが、意外なことに素直についてきた。 宗三は一般人に擬態するように待っていた。本来の搭乗者たちは新幹線で帰ることになったらしい。 「君たちは僕と三日月が連れて帰ると言ってありますから。一緒には行けませんけど」 「それだけでもジューブン。ありがと」 「ああ、それと。三日月から伝言です」 「なに、まだ言い忘れた情報でもあるって?」 「終わったらデートでもしないか、と」 「……そりゃあ、生きて帰んなきゃな」 「全く。僕を恋人のメッセンジャーにするなんて君たちくらいです」 「俺と三日月、恋人ではないけどな!」 騒いでいても仕方がない。世祖が少しだけ働きかけてリニアの扉が開かれた。すぐさま転げ込むと、世祖と陸奥はまるでアラン・マッケンジーがどこにいるか分かっているかのように走り出した。 「なあ陸奥! 犯人って分かってんのか!?」 「さあな!」 「知らねえーのかよ!」 「わしゃ探偵じゃないぞ! 知らんものは知らん!」 「それもそうだな!」 ばたばたと走った先で見つけたのは、ぐったりと倒れ込んでいるアラン・マッケンジーの姿だった。ちゃんと生きてはいる。よかった。 「#名前2#さん!? どうしてここに!?」 「コナンたちこそどうして来てるんだよ……」 「アランさんが誘拐されたからって、まさか、さっきの用事って……?」 「まあ、こっちも色々あるんだよ」 「適当な……!」