羽田名人と

 人間反りが合わない奴はいる。例えば不動と膝丸の相性が悪いように、#名前2#にだっている。 「また、君ですか」 「どうもー、名人サマー」 この着物を着て元カノに一途にでれでれする男が#名前2#と相性の合わない人間である。  彼との初対面はそんなに前じゃない。わりと最近だ。由美さんと苗子さんを助けたあの一件で後日お礼がしたいとカフェに誘われた。あの時は苗子さんが千葉刑事を好きだという話を聞いて何とかくっつけられるよう頑張ろうという話をしていたのだが、ものすごい勢いで睨まれていた。なんで彼があそこにいたのか分からないが、とにかくその男はいて#名前2#のことを睨んでいた。 羽田秀吉。それが彼の名前である。そこにいたのは偶然であったが#名前2#に会いに行ったのはわざとである。こっそりと写真を撮り、この男を知らないか?と博識な友人に聞いてみた。すると友人は「ああ、#名前2#ですね。彼がどうかしましたか?」なんて言う。 「彼!? #名前2#!? 知り合いなのかい!!?」 「はい。それはもう随分と前からの付き合いですね」 「…………。ねえ、こいつ何歳?」 「20歳ですよ」 「ふーん」 大学2年生ぐらいか、と見当をつけて羽田は友人、左文字雪にこの男について詳しく聞くようになった。 そして出会ったのがつい最近。少年探偵団たちが彼に会う前に#名前2#は羽田秀吉と出くわすことになる。 「君が#名前1##名前2#くんですね」 「………。あ、ども」  その時には#名前2#もあの睨んできた男が羽田秀吉という将棋の棋士であることを知っていた。江雪左文字の友人として名前は聞いていたがその顔は見たことなかったのだ。そしてすごく聞き覚えのある声してるよなぁ、とも。記憶の中を探ると、トムクルーズの声に似てるんだなと結論にたどりついてその後はすっかり忘れていたのだが。 「はぁ、俺に何か用すか?」 「……僕の、由美タンとどんな関係なんですかッ!?」 「……………はぁ?」 #名前2#の頭の中ではこの人キチガイなのかしらん、と誰かが呟くがぱらぱら消して由美タンってやっぱり宮本由美警部補だよなあと確認する。こくこくと頷く羽田にややこしいことになったと頭を抱えたくなった。 「あの、カフェで一緒にいたのはただのお礼であってデートとかじゃないんすけど。あの時は苗子さんもいたし、」 「そんなのは分かっていますよ!」 分かってるのかよ。 #名前2#は途端に渋い顔をして話の続きを促した。これまでの経験からこの後、どんなセリフが来るのか予想がつくし面倒くさいことになるのも知っている。 「由美タンの恋人は僕ですから! 君みたいなガキ(子ども)に由美タンは渡しませんから!!」 うん、予想パターン3の言葉だ。想定内だ。#名前2#ははぁ、と息を吐いて「俺には由美さんはもったいない人っすから。恋人もいますしね」と言う。大体はそれで終わるのだが、羽田名人には効かなかった。 「……その恋人、今度見せてください」 「はぁ?」 「君が嘘をついてる可能性もありますから」 くっそうぜえ。好きなのは! 分かったから! 解放してくれ!! #名前2#は叫びたいのをぐっと堪えて加州に電話をかけた。女装をさせて似合う、かつすぐに来られるのは彼なのだ。 「あー、30分ほどしたら来ます」 待ちますか?という言葉に羽田秀吉は即答で待ちます。と答えたのだった。 その後は何とか誤魔化したのだが、江雪の親切のような無邪気な悪意のような何かのせいで#名前2#には彼女がいないことがバレてしまい、羽田秀吉にはまだ由美タンを狙ってるんじゃないかと思われている。なんてこったい、と言うのはそれだけでなく加州がやった彼女役は誰なのかと刀剣男士に詰め寄られたことであろうか。とどのつまり、#名前2#は羽田秀吉と相性が悪いのだ。  名人戦当日というのにほっつき歩いてるなんていいご身分ですねえ、と#名前2#は毒づきながら暗号を受け取った。少年探偵団たちはピリピリした大人の雰囲気に若干怯えながら井戸を目指す。明治神宮に行ったのはその暗号を解いたからなのだが羽田は#名前2#には教えたくないと言うので#名前2#も何も聞かない。第2の暗号が清正の井戸にある、とだけコナンから教えられたのでそこに行くだけだ。世祖は博士と手を繋ぎ#名前2#たちや少年探偵団よりも後ろで待っていた。#名前2#が羽田名人といるとあまりにもピリピリしているので一緒にいたくないのだ。 井戸の中には手を入れられないので、その周りを探索する。ぼちゃん、と入れた手で小石をかき分けていたら将棋の駒を見つけた。 「香車、か」 「っすね。第二局って書いてありますし、これで間違いないでしょう」 「終わったらすぐにどいてくださーい」 見回りの警官に言われて急いで退いてからもう1度駒を見る。コナン、羽田に駒を任せて#名前2#は香車から考えつくキーワードを考えてみた。きょうす、槍、後ろには金の崩した文字……。 「あーーっ! コマの後ろに怪しい図形が…!」 「図形?」 崩し字じゃないのか?と見に行くと⊥マークに二つの丸が重なっている。七の丸と三の丸。それに、丸の重なった部分は黒く塗られている。数学的にいえば七∩三と言うこと………。なるほど、これは日本号の話を聞いていて助かった。 「うん、謎は解けた。次の場所に行こう」 「えー、#名前2#さんもう分かったの!?」 「まあ、これは俺が得意な話だから」 ほら、車行くぞと#名前2#が声をかける。先を越された羽田とコナンは悔しそうにその後をついていった。