警察学校組と
「そういえば、伊達のこと見たか? 景光は」 「え? あいつも死んだのか!!? 1番死なさそうだったのに…ていうか、ゼロやばいんじゃ!」 「松田、お前もう少しオブラートに包めよ……」 「いやあ、今のは情報不足のこいつが悪い」 と言っても、松田たち2人も盟友の伊達航が死んだことを知ったのは彼が死んでから何年も後のことだった。死んだ彼を恨む男が同じ名前の高木渉刑事を人質にした事件をちょうど警視庁で見ていたのだ。やけに鋭い眼鏡の少年と、松田が1週間だけ世話になった捜査一課の面々が必死に高木渉刑事のことを探していた。 好きだった女が前を向いて必死に刑事をやって恋愛もしているのを見て松田は少しだけ涙した。伊達の認めた男なら安心して任せられると思えた。 だが幽霊の伊達にはまだ会えていない。色んな殺人事件に遭遇したがその被害者はすぐに幽霊になる者もいればそうではない者もいた。幽霊になるのには何か条件があるようなのだがそれは詳しくは分からない。伊達も幽霊になっているだろうと信じて探すしかなかったのだ。 「景光を見つけられたのも偶然だしなあ」 「#名前2#くん見つけられてよかったねー」 「お前らこそ……#名前2#君とどういう関係なんだ?」 「爆弾テロに巻き込まれた一般人と救出に来た警察、だな」 「#名前2#くんのほうが巻き込まれてて世祖ちゃん大泣きして。しかもその時警察の方がヘマしちゃって#名前2#くん撃たれちゃって。幸い、命に別状はなかったんだけど世祖ちゃんはそれで警察嫌いになったんだよね」 「今はどうなのか知らねえけどな」 ふむ、と話を聞いていた諸伏もスプリッツァーが世祖であるのがよく分かるような気がした。特定の、がつくが一事が万事で嫌なことがあるとすぐに誇張させるし、警察は大嫌いだし。 「ずっとここには留まれないからなあ、明日は景光交えて伊達探しだなあ」 「だねー」 と、その時バン!という音がして狐のようなぬいぐるみを抱えた世祖が扉を開けて立っていた。眠たいのか半目になった表情でぬぼーっとしている。 世祖ちゃん?と萩原が声をかけた。むにゅむにゅと顔を擦った世祖は言葉になっていない言葉でしゃべる。寝言かなと思ったが世祖は結局そのまま幽霊たちをつかみぎゅっと縛りあげた。 「!!? え、なにこれ、動けない!!」 「景光、お前なんとかしろよ! 公安なんだろ!!」 「幽霊になったんだからすり抜けぐらいしろよ!」 「ていうか痛くない、これ!?」 わーわー叫んでいる3人を置いて世祖は寝室に戻った。 朝起きてリビングに行くとなぜか昨日の幽霊3人がマグネシウム混合のネックレスで手首をきつく縛られていた。 「ど、どうしたんですかこれ……」 驚き呆れながら#名前2#がそのネックレスを外すと幽霊たちははぁーと手首を振りながら立ち上がった。 「なんだよこの紐は……」 「マグネシウム混合のネックレスです。肩こりに効くっていう代物でよくつけてたんですよ。これ外してから幽霊見えるようになったってことは霊感にも効果あるみたいですね」 「幽霊の物理攻撃にもな」 「痛かったな、昨日のは……」 「世祖、出歩きましたか?」 「ごにょごにょ言いながらねー」 「すみません、世祖に言い聞かせておきます」 朝食の準備をし始めた#名前2#を見ながら萩原は世祖の寝室にお邪魔した。可愛らしいぬいぐるみはなかったが本と服と鞄は多かった。そしてよく分からない装置もある。何かの実験に使うんだろうか。部屋に来た目的を忘れて興味深いものをじっくりと眺めていたら世祖が起き出した。 「? はーちゃ」 「世祖、おはようー。ねえねえ昨日のあれってさ、もしかして……」 「……。ぃたい?」 「え、ああ、ううん痛くないよ。俺達が伊達の幽霊探したいって言ったからかなーって思ったりしちゃったり……」 「……うん」 「そっかあ。ありがとうねー、でも世祖たちにそこまで迷惑かけるわけにいかないしさ、こっちも。幽霊見るのって結構負担あるでしょ。米花は死んだ人も多いし」 「大丈夫ですよ、ちょっとくらい」 「#名前2#くん……」 「世祖起こしに来ました。えーっと、世祖も俺も伊達刑事の話はコナンたちから聞いたぐらいですけど……お役に立てるなら頑張りますんで。人間とか幽霊とか関係なく頼ってください」 どんと胸を張った#名前2#を見て萩原は中学生の頃の彼らを思い出した。昔から変なところで度胸があるというか向こうみずというか。今回はその男気に甘えさせてもらおう。 「お願い、できるかい?」 「もちろんです!」 世祖の着替えを手伝っている間に萩原さんたちの間で話も決着した。伊達刑事とその恋人、メアリーさんの幽霊を探すこと。そして諸伏さんからの提案で同期で遺されてしまった降谷さん……安室さんに何か伝えたいということだった。 「そういうのは出来るのか?」 「そういうのって? 何の話ですか?」 「ゼロに伝えることだよ」 「ふっふっふ、霊感うん十年と持ちました身としては難しくありません。それよりも伊達刑事の幽霊探しの方が大変でしょうね。会ったことないし、声も知らないし、性格も分からないし。手がかりがないと範囲をどんどん広げる羽目になります」 「伊達かあー、あいつは気の良い奴だったなあ」 「捜一にいる頃もいい検挙数誇ってたみたいだね」 「うんー、性格がよくて仕事も安定してて俺たちの中では1番の有望株」 「具体性がもうちょっと欲しいです……」 「なら、ワタルブラザーズって言ってたあの男に聞いた方が早いだろ」 「ああ、高木刑事」 その手があったか、とメールを入れる。流石に今日中には来ないだろうからと言っていたのだが実況見分のために近くに来れるという連絡が来た。急いで出かける準備をしたが車の中に幽霊を入れるのか幽霊は浮いて行くのかなぜか議論になり結局車の中に入ってもらった。 「うわー、空気椅子とか久々だなあ」 「景光、お前涼しい顔でやってんじゃねえぞ……」 「幽霊になってからも体動かす練習してたからな」 男が3人並んで空気椅子をしている様子は何とも不思議だ。助手席に座る世祖はあまり気にしてないようだが、#名前2#としてはミラーにちらちらと映る彼らが面白くて仕方ない。 高木刑事との待ち合わせ場所に着くと既に彼の後ろ姿が見えた。お待たせしました!と声をかけられて振り向いた高木刑事はやけに疲れたような感じだった。 「やあ、#名前2#くん」 「ど、どうしたんですか……そんなにやつれて……」 「いやー、最近ちょっと疲れが出てるのかよく眠れなくてね」 「……。この前の北海道の事件からは回復したって聞きましたけど…?」 「そっちは大丈夫だと思うんだけど…」 「あんまり気になるようだったら病院に行く方がいいと思いますよ。紹介聞きますか?」 「いやあ、それは遠慮しておくよ。かなり休んでたから取り戻すためにも働かなきゃだしね」 「なるほど」 だから今日もすぐに歩けるように公園になったわけだ。ベンチで伊達刑事のお墓と彼について少し聞いた。伊達刑事とは全く知りあいではないのだが、適当に昔お世話になったと言い作ろうと納得してくれた。高木刑事の人の好さはたまに心配になる。 後ろの幽霊3人に言われて警察学校の同期の話も聞いたが、話をしてくれたのは自分はずっと二番で一番が別にいたという話だけだった。後ろでは「チッ、降谷の話だけかよ…」という声が聞こえてくる。 「それじゃあ、伊達さんによろしくね」 「はい」 公園からその霊園はそんなに遠くなかった。駐車場にはほとんど車も見当たらない。車を降りて供えるための花、線香、菓子を買った。線香は七輪にずぼりと入れて先を燃やすスタイルである。これは早くていいのだが燃えるのがとても早いのだ。急いで番号を見ながら墓を探すと伊達家と彫られた墓石を見つけた。 「ここかあ」 きょろきょろと周りを確認するが伊達刑事らしき幽霊は見ない。とにかく花を入れて線香を置いた。幽霊たちと一緒に拝む。知らない人にこんなことされて嫌がられたりしないだろうか、とパッケージを開けた菓子も置いた。 「パッケージ開けていいのか?」 「幽霊さんは一応、食べ物の臭いを食べてるらしいので開けておかないとと思って。後で食べますけど」 「そうなのか。全然知らなかった」 「ちょっと墓石掃除しますね」 車に置いていたフロントガラスを拭くための布でごしごしと墓石をこすった。水をかけては土埃などを拭いていく。雑草を抜き、墓の階段に腰かけて買った饅頭を口に放り込んだ。 「あー、うまい」 「普通掃除だなんだしてから線香やるだろ……」 「あ、忘れてた……。いや、まあ許してくれますって。友人3人連れてきてるんですから」 「あう、ない」 「うん、会えてはないんだけどさ」 さて、ここからどこを目指そうか。墓にいないとなるとこの三人のようにどこか歩いているんだろう。話と事件からナタリーという女性のこともあるのだろうし、幽霊になっていたら何かあるとは思うのだが。 「おや、どうしたのですか。#名前2#」 「あれ、太郎太刀。お前こそどうした?」 「……すみません、後ろに幽霊が3人ほどついているようですが?」 「太郎太刀は知らんかったな。お世話になった元刑事さんたち。えーっと、殉職?でいいのかな」 「嗚呼、彼らが……。それで、ここは伊達家の墓ですが」 「ちょっとこの人たちへの恩返し的な? 伊達航さんっていう幽霊探してるんだけど知らない? ていうか、ここの墓の幽霊は見た?」 「見たことはありますよ。そうですね…つい二週間前には彼等はいましたね。女性と連れ添っていました」 「! ナタリーさんか、分かった。ありがとう」 「……あのさ、話が見えてこないんだが」 「あ、すみません。こっちは太刀川って言って俺のえーっと友人です。太郎太刀はあだ名。説明が難しいんですけどまあ幽霊を見ることが出来る友人が多いって思ってください」 「あーわかった。スタンド使いはスタンド使いを呼ぶもんな」 「はあ?」 「萩原さん知ってるんですね、まあそんな感じです」 「せい、たろといる」 「ん? 疲れたのか?」 「読経の方に参加しますか? 今、幽霊たちを集めて定期読経やっていますので」 「太郎太刀のそう言うところほんと尊敬する」 世祖は突然分かれてしまったが太郎太刀に抱っこされた時に泣きそうになっているわけでもなく眠たそうに目をこすっていた。確認のために手を握るとほかほかしている。 「世祖、眠いんだろ」 「うん……」 「太郎太刀、寝かせられる?」 「休憩室にいるご婦人たちに任せましょう」 「ありがとう」 幽霊たちと車に乗りこんだ。次はどこに行くんだ?と言われ、とりあえず「デートスポット…か、結婚式やれる教会ですかね」と答えた。 「お付き合いしてるって言う前に亡くなってしまったみたいだけど、その二週間前にはナタリーさんと出会ってるし、したいことはしてるかもしれない」 「ならなんで結婚式なんだ?」 「高木刑事に憑いてた気配あったから、ですかね」 「さっきの男か。彼がどうかしたのか?」 「ブライダルは女が主役っていう広告、彼と佐藤刑事なの気づいてました?」 あれです、と窓を開けた先に花嫁の女性が花婿を投げている広告が見えた。おわ、と誰かの声が聞こえた。 「良い顔してるね、この佐藤刑事って人」 「これ、高木刑事を犯人と間違えて投げっちゃったんですよ。でも、すごくかっこよくて綺麗ですよね。たぶん、広告見て自分たちも結婚とか意識したんじゃないかなーって思ったんで」 「なるほどなあ」