映画ルパンVSコナン

 怪盗キッドの発砲ということで新聞はずっとその話をしている。俺はキッドにそこまで詳しいわけではないが沖野さん曰くお茶目な泥棒が仕事しに来たらしい。沖野さんは電話でもわかるくらいに楽しそうな声で「君にも仕事を回すからよろしく頼むよ」と言った。ネットではアンチキッドとキッドファンの攻防が激しくなっている。キッドキラーのコナンに聞けば話は分かるんだろうが、そうまでして知りたい話でもない。それに……沖野さんの言葉でなんとなく予想はついていた。 「でも、お前さんはご機嫌ななめだねえ」  うりうりと隣に座る世祖の頬をつつくと指を噛まれた。まるでカメのように口を横に開きがぶりと一発である。指を引っ張るが骨のところに歯が引っかかっている。世祖、と名前を呼んでも聞いてくれない。 「世祖、離しますよ」 「……」 「離します」  すっと口を外して世祖は床に座り洗濯物をたたむ彼をじっと見つめた。俺もなぜコイツがここに泊りたいと言いだしたのかよく知らない。突然やってきて宣言したのだ。お金は払えないが家事は手伝うというのでやってもらっている。なぜかホクホクした顔だった。  彼に話を聞くと厄介なことに頭を突っ込む羽目になるのだ。今日は世祖と一緒にお出かけでもしようかと思っていたが予定は全てキャンセルになった。出かけなくていいのですか?という問答には気分の問題という答えでゴリ押しした。世祖は立ち上がると部屋へ行ってしまった。俺はスマホでSNSを開きタイムラインに流れてくるニュースを見ていた。数珠丸は俺の方をちらりと見て何か言いたげにしていたが洗濯物にまた目を落した。ふと見やると世祖の下着をたたんでいる。本丸にいた時から見ている光景だがイケメンがやっていると考えるとなんだか奇妙な気分になった。扉が開く音がして世祖が戻って来た。 「じゅゆ。こぇ」 「おや、これはまた綺麗な首飾りですね」 「あ、それこの前公民館でやってたイベントで作ったんだ。七宝焼きだけど世祖が加工してるからかなり力籠ってると思う」 「有難く頂戴します」  スマホの通知を確認するとグループチャットが盛んに動いており、ルパン三世だとか次元大介だとか石川五右衛門だとか色々と世話になった人たちの名前が挙げられている。日本に来ているという噂があるのは知っている。それに関わりたくないと思っても数珠丸がここにいる時点で絶望的だった。ぴろん、とチャットではなく登録しているSNSからコメントがありますという通知だった。開いてみると昔世話になったネット上の同僚からの連絡だった。 「世祖ー、アンダーワールドから連絡来たぞ」 「よむー」 「えーっと、ハロー、セイソ。お元気ですか? 私は今寮のある学校にいます。父親ともちゃんと話し合ってまたこの学校に戻ってきました。セイソも学校にいるんでしょう? またお話聞かせてね。……っと、添付ファイルがあるなあ」  のそのそと世祖が俺の膝の上によじ登ってきた。そのまま携帯を掴むとポチポチと解凍させていく。ぴこん、と音を鳴らして動画ファイルが展開された。スマホではやけに重くてジリジリとダウンロードしている。パソコンに繋ぎもう一度ファイルを開くと今度はちゃんと動いた。 「よぉ~、シグマの子どもたち。元気にしてたか?」 「ルパン!!」 「アミから連絡が来て驚いただろ? まあ、色々こっちもあってな。こいつのこと助けに行ってたわけよ。ひと段落着いたと思ったらまた仕事が入ってなあ。今度は俺たちがお前らの国に向かう。覚悟しとけよ」  言いたいことだけ言うとルパンからの動画は消滅。パソコンには大量のキャッシュが残された。 「おや、ここに出ているのは次元大介ですね」 「んあ!?」 「ほら」  ひとり、テレビをじっと見ていた数珠丸が笑った。指で示されたがよく見えなかった。さっきのニュースはエミリオがツアーのために来日したよという話だった。SNSでエミリオの空港での動画を検索すると後ろの方に次元大介らしい人物がいるのが見えた。 「いたでしょう?」 「いる、なあ。なんだ、エミリオ・バレンティに用事があるってことか?」 「またSPをやっているのかもしれませんね」 「でも今回は数珠丸は出かけてない、けど」 「そうですね。ですが、今回はここで待機していろと沖野さんから命令されたのですが」  少しの間を置いて俺は急いでコナンに電話をかけた。あいつのトラブルメーカーっぷりはきっと次元をも見つけさせているはず。電話に出たコナンは「#名前2#さんテレビ見た!?」と開口一番大声で聞いてきた。 「見た、それでこの電話した」 「青江さんは?」 「恒次の方はいる」 「恒次さん以外にもいる…んだったね、そうだ、ごめん」 「それで、コナンはどうするつもりだ?」 「蘭姉ちゃんたちがエミリオのホテルを見つけたらしくて。それで見に行くつもり」 「んー、俺の方もそっちに行くか。エミリオに興味はないけど次元たちが何するかわかんないし」 「じゃあサクラサクホテルでね!」 「了解ー」  数珠丸にも明日、用事がなかったらついていかせることにして今日は世祖と家で遊ぶことに決めた。  サクラサクホテルのロビーでのんびりとしていたい所だが、これでも沖野さんからお願いという名の仕事がある。今回はコナンを危険な目に遭わせないこと、だった。無茶ぶりである。念のため数珠丸はロビーで待機だが、俺はコナンの方についていかなければいけない。世祖も引き連れてバーに行くのは変な気分だが仕方ない。沖野さん曰くエミリオのスポンサーが怪しい仕事をしているらしくルパンたちもいる今回のライブで証拠をイタリアの警察に提出してやろうということらしい。珍しく裏の話まで語ってくれている気がする。いつもこれくらいなら、こちらも何のわだかまりもなく仕事ができそうなものなのに。  バーに行ってみるとうろんな視線を頂いた。世祖を抱き上げて急いで次元とコナンの元に向かうと二人はちょうど電話をしているところだった。むっと世祖の目が細まる。じぃっと見ているのはおそらく……電波とそこに載せられている情報だ。 「#名前2#、あぇ」  世祖が指差した先には東都タワーが見えた。すぐさまスマホを開き数珠丸にテクストを送った。するとコナンと次元の視線が交わり俺の方に向く。俺はくるりと回れ右して急いでエレベーターのボタンを押す。後ろから勢いよく二人が走ってくるのが感じた。俺に抱き付いて後ろを見ている世祖はくすくすと笑っていた。 「よぉー、久しぶりだな。世祖に#名前2#」 「#名前2#さんも世祖もなんでここに!?」  チーン、とエレベーターが到着した音がする。とりあえず中に入らせると二人はぞろぞろと中に入ってきた。今回は依頼があって自分も動いていること、東都タワーに今から向かい、仲間と合流しようという話をしたのだ。仲間?とそろって首をかしげる二人に#名前2#は「大丈夫、コナンたちも知ってるよ」と笑った。 アンダーワールドちゃんはアニメのルパンから。