裏切りの真相

原作と少々違う展開です。 「なーなー、#名前2#さんはアサカって人知り合いにいねーっすか?」  まるで自分の家のようにくつろぐコナンを見ながら俺は知り合いの名前を思い出した。何度考えてもそんな人ーー特にコナンに聞かれるような悪人はいなかった。 「いねーけど……って、なんでここにいるんだお前は」 「だあって、今日は世祖の方から誘ってきたんすよ?」  世祖の方を向くと誰かと電話したままこちらを向こうともしない。うだうだしゃべっているのを見ると刀剣男士の誰かなのだが候補が多すぎてしぼりこめなかった。  コナンは赤井さん――ではなく沖矢さんと一緒に出掛けて行って解決した事件でRUMとASACAというダイイングメッセージを知ったとか気づいたとかなんかそんな感じらしい。コナンを抱き上げると「やめろよー」という声が聞こえたが無視した。久々にコナンを抱き上げたがまだまだ軽い。ご飯ちゃんと食べてるのか。 「いいなあ、コナン。乗せてもらって」 「うるせー」 「生意気だな、相変わらず」  包丁と不動の言葉にコナンはふんっと息をならして返事をした。本当は大和守が面倒を見ている二人なのだが、大和守が沖野さんに捕まっているためこっちに連れてきた。  彼等がうちに泊っているのはつい最近のことなのだが、それと同じくしてコナンはうちによく泊まるようになった。最初は蘭ちゃんが空手の合宿があるからという理由をつけていたのだが最近は博士の家に泊ると言いながらうちに来るのである。こちらが世祖を預かってもらうこともあるため何か言うこともできないしコナンの話を聞くのも面白くて流されてしまった。時期を見てカミングアウトしようと思うのだが。 「そう言えば……波土が出す新曲はアサカじゃなかったっけ」 「波土? 誰だそれ」 「知らないの#名前2#さん。ロックシンガーの波土っていう。テレビにもまあまあ出てるよ」  知らない、なあ。光忠たちなら知ってるかもしれない。包丁がスマホで動画を見せてくれた。コナンの頭に顎を乗せて再生ボタンを押す。厳つい顔の男がハードロックを歌っていた。  動画が終わったころにはコナンの腹がぐうと鳴った。作り置きのカレーを温めておいでと床に下ろす。すぐに準備しに行った包丁の後を追いかけていった。 「世祖、そろそろ飯を食べよう」  不動が恐れ知らずのように世祖に近づいた。世祖はそのまま電話を切って大人しく不動の手をとって歩いて来る。俺の前にやってくると置かれたカレーの皿にううっと顔をしかめた。 「コナンも先に食べな」 「#名前2#さんは?」 「俺はあとから食べる」  ふうん、とコナンはカレーをもぐもぐと食べ始めた。俺は提出しなければならないレポートをまとめる。グラフの誤差は0.2までOKなので緩くしてもらって助かっているがエクセルでまとめているとすぐにデータが飛んでしまう。この前作ったデータはUSBに保存することを忘れてしまい、今は復旧作業だ。  後ろに誰かがくっついた。声をかけるとお風呂と言われる。おぶるように腕を回すと世祖が肩から顔を見せた。 「今日はコナンたちと入ってくれ。今日はこっちやらないと、単位落とす」 「#名前2#さーん、俺も足痛めてるから一緒に入ってくれよー」 「不動のは不注意で階段から落ちたせいだろ…。コナンー」 「世祖のやつは無理っすよ」 「……」  包丁に任せるのは少し怖い。ナイフスなんていうあだ名を楽しむくらいには愉快犯なところがあるのだ。仕方ない、と立ち上がって風呂を浴びることにした。世祖、不動、俺で先に入ってしまうことにした。  小学生2人、男1人ともなるとやはり風呂は狭い。まあまあ広い風呂を設計しているはずなのに。足を折り曲げて間に不動が、その前に世祖が入った。コナンも入ればいいのになーと不動が言うが。精神的に高校生なアイツは絶対に無理だろう。毛利探偵や蘭ちゃんならまだしもなあ。  風呂からあがるとコナンと包丁がパソコンを開きごちゃごちゃやっていた。世祖らに服を着せたあと、パソコンを覗き込むと波土禄道と書かれた検索結果だった。ネット記事の見出しに新作発表ライブ!という文字が見える。 「これか、新作のアサカ」 「ローマ字で書くんだってさ。ASACAって」 「ふーん」 「それでコナンが何でCAになるんだって考え込んで検索してたところ」 「なら会いに行くか?」 「え、会えるの!!?」 「三日月か園子ちゃんにこのライブ前に会えないか聞いてみろよ。コネはちゃんと使うもんだぞー」  スマホを持ってこようとした#名前2#に世祖が「ん」とメモを差し出した。ライブ前日のリハーサル見学と書かれている。もしかしてさっきの電話?と#名前2#の顔に書いてあったのか世祖はうふと笑っている。 「……三日月に感謝だな、今度何か持っていこ。俺と世祖と、コナン、あと誰か来るのか?」 「沖矢さんもお願いできる?」 「分かった」  三日月にメッセージを送ろうとすると園子の方から新着メッセージがあった。さっきからずっと話題になっている波土のライブについての話だった。安室さんが行きたいというので手配したが#名前2#さんたちもどうかというお誘いだ。何で誘ってくれたのかという理由がイマイチ分からないが藪をつついてしまいそうだった。  スポンサーが2つも見学をお願いするのは会社も大変だろうということでコナンたちと相談して園子に全て任せることにしていたのだが。 「わー、すごいメンツ」 「ははは……」  コナンが呆れた声を出すくらいにはひどいメンツだ。俺も何でこんなことになったのか分からない。ゲホッと世祖が咳をした。まず園子ちゃんと蘭ちゃんが来れないというハプニングである。コナンは世祖を迎えに行った俺が連れてきたが、彼女らは急な集会を発表されてしまったらしい。レコード会社の社長が俺のことを覚えてくれていたので(三日月と共にパーティーに出席したときに見られていた)中に入ることはできたのだが、そこで集まったのは安室さん、沖矢さん、コナン、世祖、俺という異様なメンツである。波土さんの自称ファンである大人二人の会話はどうも薄ら寒い。  微妙な顔をしていたことは社長、布施さんには波土さんの引退を悲しんでいるように見えたらしい。 「彼のことは何度も引き留めたんだけどねえ」 「それでも引退する、と」 「明日のライブのラストに発表するつもりだったみたいだよ」  会場に入ると波土さんのマネージャー、円城さんに会った。何か話していた男はライブスタッフさんに背中を押されてどこかへ行ってしまう。円城さんは社長と一緒に居るのを見て、こちらが見学者と気づいたらしい。駆け寄ってきてがばりと頭を下げた。 「ごめんなさい、見学ができないんです!」 「……え?」  話を聞いてみると見学の予定は入っていたのだが、歌詞が完成していないため誰もいない客席を見ながら考えたいということらしい。世祖が服の裾を掴んだ。情けない顔を見てマネージャーさんはひどく辛そうな顔になった。しゃがみこみ、視線を合わせてごめんなさいと謝る。 「どうする、世祖。帰るか?」 「んー……」  恥ずかしがるように俺の背中に隠れて世祖がうなった。コナンは残るというだろうし、蘭ちゃんたちが来るまでは俺もここにいるつもりだ。来れなかったら俺が家に送らなければならない。世祖もそれが分かってるのか「のこる」と小さく呟いた。 「すいません、俺たち見れるまで残っててもいいですか」 「大丈夫ですけど……」  小学生2人を見て口ごもった円城さんに頭を下げる。すいません、波土さんのファンなので見たいんだそうですと付け加えて。 「あの、さっきの人は?」 「波土を付け回す雑誌記者なんです。社長も私も注意してるんですが、ああやって入ってきてしまって…」  まるで害虫のような言い方だった。ただ、そういう嫌味な人は死にそうだなあとも思ったがこのホールから追い出されたらそれもないだろう。 「いやあ、まさか#名前2#くんたちも来るとは思いませんでしたよ」 「安室さんもロック聞くんですね、意外でした」 「若いころはかなりハマってたんですよ」  そういって安室さんはイギリスの有名なロックバンドの歌を歌ってくれた。伊達組がカバーした歌だ。俺も知っている。一緒に歌うとなんだか楽しくなってきた。世祖も寄ってきて口笛でメロディーを歌いだす。まるでユニゾンをこなしているようだった。 「お上手なんですね」 「布施さん……。いやあ、ただの遊びですし」 「でも#名前2#くん、動画に挙げたりしてますよね」  ニッコリとえぐいことを言われてしまった。沖矢さんも食いついて「ほう、どんなタイトルですか?」と聞いてくる。コナンに助けを求めたが苦笑いで終わらされた。何とか布施さんと沖矢さんの追及を逃れようとぐぬぐぬ言い淀んでいたら消防署の査察の人たちが来た。ライブ前の確認ということらしい。扉を開いた人たちは叫び声をあげてへたり込んだ。 「ど、どうしました!?」  駆け寄った中にはどうやったのか長いロープを座席に結んで首を吊るされた波土禄道の姿があった。