2.5

書くだけ書いてアップしてない設定たち。これらを踏まえて書いているので見といた方がいいかもしれない。 ・主人公は天文学の教師に助手にならないかと誘われ居残ることに。リドルはリドル家を引き継ぎ、時臣は主人公とアルンハイムの庇護下に。 ・キャリーは実はシリウスの双子の妹。 ・スネイプは魔法薬学、ルーピンは闇の魔術に対する防衛術の教師としてホグワーツにいます ・  教え子だったペティグリューを助手に据えてはや数年。そろそろ彼に仕事を任せて老体に鞭を打つ時間は終わらせてようと思っていたのだがそれは無駄になった。天文学の仕事は引退できても生徒の相談役の仕事は終わってくれなかったのだ。アルンハイムは笑っていたが沖野さんーーグラハムさんは渋い顔をしていた。あんなにも元の世界に帰ろうとしていたのにグラハムさんが心境の変化によりここに留まらせることになった経緯は割愛するが、お陰で#名前2#はグラハムさんと生活する選択肢を得た。そこに飛びつきたいのはやまやまだが、生徒達のことを突然見放す訳にもいかず、ずるずるとホグワーツに席を置いている。いつ辞めようかと迷っていた#名前2#にとある転機が訪れた。 「……カルデアス」 「読めないのなら読まないでください」 「セブルス、お前も言うようになったなあ」  生徒の頃はもう少し懐いてくれていたように思うセブルス・スネイプは我輩にも見せてくださいと紙を奪った。人理継続保障機関カルデアス。そこに人を派遣してはくれないかという時計塔からのお願いだった。魔術と魔法。考え方の全く異なるこの機関を時計塔は蔑視して今まで関係を持っていなかったのに胡散臭い機関には斥候として派遣しようとするのだから、中々に強かである。せっかくだから、と俺は時計塔の案に乗って行ってみたらいいのではと提案した。勿論行くのは俺である。ペティグリューも大分育ってきたし、困ったら各授業で決めた助手役の生徒達が助けてくれるだろう。  ダンブルドアは渋っていたがなんとか説き伏せてカルデアスへ行く準備を始めた。いざ始めるとなると何が必要なのか分からない。マグル界に行くのだからいつもの旅行セットという訳にはいくまい。ああだこうだと頭を動かして準備をしていたらドタドタと誰かが走ってくる音がした。天文学の教室はかなり高いところにある。教師らは自分の箒を使って上がってきたり手紙で用件を済ますことが多いのでおそらく生徒だろう。扉を開けて下を見てみると驚くことに弟となぜかスネイプと付き合っているはずのキャリー、その双子であるシリウスが階段を上っていた。 「お前達、姿表わしは?」 「ここでは出来ないことになってるでしょう」 「理事長になるとそこら辺めんどいなあ」  まあお茶でもどうぞ、と紅茶を差し出す。時臣とシリウス用には高い茶葉だがキャリーと#名前2#はマグル達が好むティーパックを使っていた。色合いも香りも全く違うのだが時臣もシリウスもこの状況には慣れていた。 「兄様、事情はダンブルドアから聞きました」 「うん、カルデアスって所に行くことにした」 「本当は…私もついて行きたいところですがアルンハイムに止められました」 「ごめんなさい、私の力が弱いばっかりに……」 「まあ、くっついて召喚されたのはこっちの落ち度だから。それで、シリウスはなんで仏頂面なんだ?」 「……」 「あの、リドルとも相談したんですけど#名前2#先生にシリウスをついて行かせるのはどうかと」 「えっ」  #名前2#のこの発言はただの反射による驚きのものだった。シリウスと言うとキャリーにくっついているか、ジェームズたちと遊んでいるかのどちらかで今はジェームズのもとに生まれたハリーポッターを可愛がっている印象だった。そのシリウスが自分とカルデアスに来る? 有り得ないだろう。そう言ったことが発言の後にぐるぐると胸を疼いていた。シリウスはかあっと顔を赤くさせて「キャリーが言うから仕方なくだからな!」と叫んだ。#名前2#はえ、ああ…と頷いたがすぐに「嫌なら断ってもいいからな?」と言う。素直になれないシリウスの言葉は善意により砕かれた。キャリーは何も言わないように紅茶を飲み、時臣はいい気味だとほくそ笑んだ。 「行くっつってんだろ、ばーか!!」 「おう……」  あんまりな温度差にキャリーの方が道行を心配してしまう。#名前2#は気楽に笑みを浮かべ「それじゃあ頼んだ」と言うのだった。  役人からカルデアスではなくカルデアだと教えて貰い、そこに繋げたポートキーを受け取った。帰りは迎えが来るのでと言われてシリウスと#名前2#は素直に空っぽのフラスコに触れた。ジェットコースターのような感覚にさらわれて外に飛び出した。落ちたのは意外にも室内だった。目の前にはオレンジ色の髪の毛の少女がいた。 「あ、あの……?」 「初めまして、魔法使いです」  突然現れた壮年の男と若々しい男に少女は悲鳴をあげた。さらには突然背中から襲われてシリウスは犬に変身し#名前2#も杖を刀に変えてと色々とあったがホグワーツからの派遣だと了解してもらえたのはそれから20分もした後だった。 「時計塔から連絡がそちらに流れてしまったのか、道理でこんなに来るのが遅くなるわけだ」 「本当にすみません、お怪我は大丈夫ですか?」 「いえいえ、こちらも相当やらかしましたしお相子です」  そう言う#名前2#と横に立つシリウスはボサボサの髪の毛で洋服もちぎれていたりする。対する藤丸立香という少女の背中に控える男たちも同じくらいひどい姿だった。 「僕はドクター・ロマニ。一応、代理でここの責任者のようなものをやっています」 「私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。サーヴァントとしてここと契約している」 「サーヴァント……」  #名前2#は微かな記憶を引っ張り出してきた。遠坂の家で言われていたことだ。確か、時臣が召還を命じられるはずだった。それがこの少女に? 不審がる表情になったことに気づいたのかドクターは慌てて「今はこの子だけですけど、これは不慮の事故があってのことなんです!」と説明した。 「あー、えっと、あなた達は冬木とか遠坂って名前に聞き覚えは?」 「! 君、関係者なのかい?」 「弟の方だけ。俺は使用人の息子だったからあんまり知らされてない」  #名前2#の言葉にダ・ヴィンチは「そうか、すまない」と謝った。シリウスはさっさと本題に入ってくれとぼやいた。 「そうだね。無闇に話を広げるのはやめよう。君たちにお願いしたいのは彼女、藤丸立香くんの魔術師としての教育なんだ」 「あー、それで時計塔に申請したのか」 「まあそういう事だね」 「だがホグワーツに回されて今はこんなすれ違いが起きたわけか……」 「まあまあシリウス。お前はホグワーツに戻ってもいいからな? 魔術の簡単な心得は俺も教えられるから残る予定だけど」  シリウスは#名前2#のことが心配だった。この男はどこか自分自身を突き放しているので見ているこっちの方が怖くなる。だが素直になれずにキャリーの言葉に縋ってここまで着いてきた。なのに、また帰れだと? #名前2#を睨みシリウスは絶対に帰ってやらないと叫んだ。後々仲良くなる藤丸立香の方がシリウスの気持ちを分かっていたというのだから#名前2#は本当に鈍い男だ。 「ここでガンドを打つ!」 「はい!」  狙った的にガンドを当てるのにも一苦労だったが、今ではかなり上手くいくようになった。味方へのバフや回復は確認しやすいが、敵へのデバフとなるとその難しさは1段階上がる。10回も連続で当てられるようになればいいだろう。 「#名前2#くん、終わったかい?」 「ドクター、シミュレーションありがとう」 「ふぃ~、藤丸これから戻りますー」  コフィンから出るとシリウスと伯爵がいた。いや、伯爵は偽名だったか。確か本名はエドモン・ダンテス。小説がモンテ・クリスト伯とあるのでいつも伯爵と呼んでしまう。伯爵は藤丸のもとにいつもくっついているのと同じようにシリウスは俺のところにくっついていた。藤丸のサーヴァントたちは師匠ヅラする俺を嫌ってるやつらもいる。いつもシリウスと喧嘩するので無視することも出来ない。伯爵もそういうタイプだった。初っ端の挨拶から「貧弱な回路だな」である。えー、こいつが師匠ー?と言いたげな顔だった。それにシリウスがキレて魔法をかけようとするし、伯爵はそれに戦おうとするしで本当に困った。 「またコイツに教わっていたのか」 「エドモン…。うん、ガンドの撃ち方をね」 「お前も懲りないな」 「でもちゃんと覚えないと。私がマスターだから」 「だからといってそんな風になってまで……」  じろりと十字架を刻んだ瞳が向いた。シリウスの雰囲気が悪くなるのを見てさっさと出ていこうと思う。駆け寄ってきたマシュに礼を言いシリウスを引っ張って歩いていく。 「し、師匠!」 「藤丸、風呂はいっておけよー」  はい!と力強い声が聞こえた。伯爵が遮っているかもしれないが一応手を振っておく。シリウスは何か呟いたが聞こえなかった。 「#名前2#さん、あんたも風呂入るか?」 「いや、俺はいいや。スタッフたちを先にシャワー浴びせて休憩させるのが先」  レイシフト続きでスタッフたちはほんの少しの仮眠を取りながら交代して仕事をしていた。今は藤丸に修行をつけるという名目で簡単なシミュレーションだけで終わらせてる。藤丸が休めればドクターも少しは休まるだろう。 「……#名前2#さんはいつも人のことばっかりだな」 「あはは、よく言われる」 「……やっぱり俺が見てやらないと#名前2#さんはダメだな!」  にっかりといい笑顔で笑われて心にぐさりとトゲが刺さった。そんな、そんなに俺って自己管理能力が欠けてると思われてるんだろうか。 「シリウス、俺そんなにダメなやつか…?」 「うーん、ダメダメですね!」  こいつとジェームズはピーターからちゃんとデリカシーってのを学んでくればよかったのに。  エドモンは#名前2#たちの背中を見送ったあとぶはぁと息を吐いた。いつも紳士然としている彼にしては珍しい行動だ。#名前2#が見たら驚きのあまり変な声を出すだろうがエドモンはそんなことはしない。立香とマシュはエドモンを見て「まだダメなの?」「やっぱり難しいんでしょうか」と口々にしゃべる。それに対してエドモンは髪をかきあげてうなった。 「ダメだ、やはり俺には無理だった」 「無理じゃないって!! エドモンならできる!」 「ぬぅ……」  エドモン・ダンテスは困っていた。それはもう非常に困っていた。#名前2#・アルンハイムと名乗った男は最初こそかなり胡散臭く思っていたが今ではただの予防線だったと気づいたのだ。サーヴァントたちと関わらないようにするための予防線だった。彼はマスターをよく導き、スタッフとサーヴァントのいざこざも収めていた。サーヴァントたちは一部、マスターよりも親しいのではと思うものもいたが、割り切った関係でいいという者達ばかりだった。もしくは一緒にいるシリウス・ブラックと話したいがためか。  エドモンはマスターのことが一番大事だ。他のことなど知ったことではない。マスターが望むからこの世界を救おうとしている。そこに突如として現れた男がマスターの中でもかなり上位にランクインしたものだから焦っていたのだろう。エドモンは仲良くしたいということを言えずに今もくすぶっているのだった。 「あいつを見るとどうしても口が変なことを喋り出す」 「ま、まあ……。うん、それは否定出来ないかな」 「俺もこのままではいけないと思ってはいるのだが……」  そこで#名前2#が居ないうちにシリウスに相談したのだった。マスター曰くシリウスもエドモンと同じくらい素直になれない人だ、と聞かされて。シリウスは相談を受けて直ぐに「あいつに変な期待はよしとけ」と忠告した。 「あいつは言葉通りに受け取るぞ。特にネガティヴなことにはな。#名前2#先生に期待はしない方がいい」  むむ、とエドモンは唇をとがらせた。それを見てシリウスはせせら笑い「そのまま悩んでろよ」と言うのだった。シリウスの煽るような発言はカルデアへの対抗意識のせいだろうと流していたが今回のそれは聞き流すことができなかった。じっとりとシリウスを睨んだままマスターと#名前2#を迎えた。そんな気持ちのまま喋ったものだからアタリが強くなってしまったのだ、と思いたい。 「ほら、#名前2#さんのことだからきっと話せれば仲良くなるよ! あの気難しい虞美人もそれで仲良くなってるし!」  虞美人は誰にでも気難しかったろう、と野暮なことをマシュもエドモンも藤丸には言えなかった。そうだな、と微笑むのだけで彼は精一杯だった。これから彼らがどうなるのか、話が丸聞こえなスタッフの方が心配だった。