アルジュナオルタと

 インドの異聞帯で一悶着あり、カルデアベースにアルジュナオルタが来てから更に一悶着あったものの、#名前2#はアルジュナオルタを受け入れるようになった。受け入れられたという自覚のあるアルジュナオルタは笑顔が増えた。その代わりに刀剣男士たちの幸福度は下がったようだったが、ダ・ヴィンチはそこまで面倒見きれないよぉと疲れた声をあげたのだった。  アルジュナオルタは暇さえあれば#名前2#さん#名前2#さんとその後ろをついていくのでホームズから「まるでニワトリの親子だね」と言われたことは記憶に新しい。ニワトリじゃねえよ……と疲れた声で言う#名前2#にホームズはニヤリと笑って「そうだったね、君にとっては付属品みたいなものだよね」と揶揄したのだった。アルジュナオルタがなぜ#名前2#にこんなにくっついてくるのかと言えば、その理由は未だによく分かっていない。   #名前2#はどうでもいいと思っていたし、藤丸は聞くだけ分からなくなるだけだろうなと避けていた。知っているのはホームズと世祖だけであるが、2人は何も語らなかった。  #名前2#はカルデアベースにいても世祖の世話を焼く。流石にカルデアの時のように食事をしよう、風呂に入ろうなどとは言わないが、ちゃんと起きてるのかとか、キャプテンの仕事を手伝ってるか、と何くれとなく言葉をかける。世祖に声をかければ自ずと刀剣男士たちも出てきては自分はあれこれをした、と報告して褒めてもらう。この緊急事態なので働けるのなら働け、というのが#名前2#の言い分だ。普段はそんなに褒めたりとしない彼がすぐに褒めてくれるということで刀剣男士たちは張り切っていた。#名前2#の佩刀である陸奥守はそんな光景を見ながら合戦か???と首を傾げていた。  それに対してムスッとしていたのがアルジュナオルタである。アルジュナオルタの記憶の中にはあのように褒めてもらい頭を撫でてもらうことも、手を引っ張ってもらうことも、悪いことを教えてくれる道標もいなかった。自分には自分の指針しかなかったのだ。  アルジュナオルタは自分が何をすればあの男に褒めてもらえるのか分からなかった。そんなことを思い始めると#名前2#さん、と刀剣男士たちのように呼び慕っても作り事のような気がしてしまった。アルジュナオルタには考えても考えてもよく分からなかった。分からない時は聞くのが1番だ、と#名前2#に教えられていた。 「#名前2#」 「んぅー?」  食堂でずるずるとうどんをすすっていた#名前2#は自分の背中にひっそりと佇むサーヴァントを見ながら「何で今日はこんなに辛そうな顔してるんだ」と疑問に思った。最近は元気な姿を見せていて楽しそうにしていたのに。 「……。私も褒めて欲しいのです」 「ん!?」 「何をしたら褒めてくれるのでしょうか」  アルジュナオルタは真面目な顔をしてそんなことを言う。#名前2#にはその光景がデジャブだった。どこかで見たことあるような。うーん、と考え込んだら気づいた。そうだ、アメリカに召喚された時の。クーフーリンオルタやメイヴと一緒にいた時のアルジュナに近いのだ。  #名前2#には何と答えればいいのか分からなかった。ここでマスターの役に立て、と言うのは変な気がした。そんなことを言ってはマスターの役に立ってないように思われるかもしれない。アルジュナオルタは立ったままずっと#名前2#を見ている。 「そうだなあ、何か好きなものを見つけたらどうだ?」 「好きなもの……」 「うん、それで俺に教えてくれ」  アルジュナオルタは困惑していた。もっと具体的な命令が来ると思った。そしたら自分は完璧に遂行する自信があった。なのに答えが分からない曖昧模糊とした命令を受け取ってしまった。ふう、とため息を着く。受け取った。確かに受け取ったのだ。褒めてもらえるのなら、頑張ろうと思った。  #名前2#がうどんをすする向かいの席に座っていたロビンフッドもまた困惑していた。今のは一体なんだと言うのだ。 「あのぉー、おたく?」  #名前2#はつゆに浮かぶネギを器用に箸でつまむ。お、上手い。いやいや、そういう話じゃなかった。 「いいんすかー、あんな適当なこと言って」 「いいんじゃねー? ただのコミュニケーションだよ」  そう、なのだろうか。いや、確かにあれは人間じゃない。自分たちとは根幹から違う存在だ。それらに対して好きなものを見つけろというのは……。そしてそれが許されてしまうのが、彼の凄いところなのだろう。人(人ではないが)を惑わす力とでも言おうか。 「うん……、あんたがサーヴァントたちに気持ち悪いくらいにくつっつかれるの分かる気がします」 「ごめんちょっと意味がわからないんだけど」  どう考えたってそのままの意味でしょ、とロビンは口の中で呟いて自分のカレーを食べた。