最後の恋を教えて

長谷部×女審神者要素あり 前提:本丸とは別の空間に行くには審神者の許可がいる。(例は戦場、田んぼ、花街)  俺がもとから性欲が薄いせいで花街にはほとんど行かない。同じように田貫、獅子王、倶利伽羅、長谷部は家というか本丸に居残り派だ。花街は遊女たちと遊んだり一夜を交わしたりするそうだが、短刀たちは本丸じゃ味わえない南蛮のものが食べれると楽しそうに出かけている。酒好きなやつらも同じ理由だ。ああ、それと興味なさそうな江雪や一期も保護者として出かけているっけか。  どうも長谷部という刀は主は自分だけのものだと言いたいらしく、その嬌声を本丸内に響かせるので主の部屋から一番遠い祈祷部屋に4人で入りびたり、石切丸と太郎太刀に頼んで結界を張るお札を部屋の四隅に貼ってみんなでUNOパをする。人のあえぎ声、しかも尊敬する主がいつもじゃ出さない艶っぽい超えてあえがされてるなんて普通は聞きたくないだろう? 演練で見た御手杵という槍がいればもっと楽しいんだろうが槍の三名はあいにくとこの本丸にはいないのだ。前置きが長くなってしまったが、これが当本丸の日常であった。皆は花街で遊び、俺たちはUNOパ、主と長谷部は枕を交わす夜だったり俺たちに混ざってテーブルゲームをしたり。まさかまさかこの均衡が崩れるとは俺も思っていなかった。  ある日、薬研と乱が俺たちのもとにやってきてぱーてぃに混ぜろと言ってきた。まあいいか、と軽く返事をして週に1回くる花街の日に俺は酒、獅子王が菓子、倶利伽羅は札とUNOを用意して祈祷部屋に行った。長谷部と田貫は24時間遠征で帰るのは明日の朝なので今回は主がつまみ担当になった。いつもと違うメンバーの4人でけらけら笑いながら廊下を歩き、障子をあけると薬研、乱に加えてなぜか一期が苦笑いしながら座っていた。同じ太刀ではあるが彼を久々に見た感触がするのは俺のせいだ。そして弟思いで芯の強く優しい彼がここに居心地の悪さを感じ取っているのも俺のせいだろう。 「よお、一期。お前がこっち来るなんて珍しいな」 「ええ、ここに来るのは久々です」  一期一振は以前は割と来てたのだが、主と一期の関係を長谷部に勘ぐられて長谷部に「もう来ないでくれ」と言われてしまっていた。その後主と長谷部がきちんと恋仲になった後も遠慮してこない様になっていたのだ。そしてここで気まずいのが俺だ……。実を言うと長谷部が勘ぐった理由というのが、俺がある場面を見てしまいそれを長谷部に問い詰められたからだ。"主と一期が2人で顔を寄せて何かを話していた。"とも言ってしまった。そしてここでさらに自分の話をすると、俺はその場面を見てかなり茫然としていたらしい。獅子王に夕飯をとられたり倶利伽羅に湯船で沈みそうなのを助けてもらったり田貫に珍しくマリカで負けそうになったりとひどい有様だったらしい。多分初太刀である俺ではなく一期を頼っていたことが気に食わなかったのかもしれない。初期からいる人間にはそれなりに意地ってものがあるのだ。(これを分かってくれるのは一番刀の陸奥守と前田だけであるが。)  長谷部が"来ないでくれ"と言わなければたぶん俺の方から来なくなっていただろう。顔を合わせるのがつらいというかなんというか。はぁ、とため息をついた。  ーーため息を、つかれて、しまった。  ビクリと震えた肩を薬研と乱が押さえてくれた。少し息をついて「今日のつまみは薬研と私が作ったのですよ」と言ってみた。#名前2#のために慣れないながらに料理をしてみた。主に教えてもらった"砂ズリときのこの炒めたのーオリーブオイルとアンチョビでー"という一品。写真がキレイだったので選んだのだが、火が苦手な自分には炒めるという前提から難しかった。主に何度も味の手直しをしてもらい、手と心をボロボロにしながら料理を作り初夜を待つ生娘のように祈祷部屋に座っていた。いじらしい兄やの姿に薬研と乱は「いち兄がようやく馬鹿になってくれた」と笑った。一期一振は粟田口の長兄であるという自負が強いため、弟の短刀たちや他の流派の短刀、はては叔父役の鳴狐にまで世話を見る始末である。とどのつまりは一期は利口すぎた。利口さを求められ、そうあり続けることを求められた。#名前2#の口ぶりで表すならば"作りもののイイコ"である。さてはてそんな一期と#名前2#が仲良くなるのには時間がかかったものの、仲良くなってからは彼らは信頼という言葉が似つかわしいコンビだった。だがその信頼が崩されたのは#名前2#の方からだった。話しかけてこなくなった#名前2#に一期はその利口な頭で考えて自分に非があると信じ込み今ここまで拗れたままやってきたのだ。  ここまで拗れたのにも理由がある。#名前2#が主と仲睦まじく会話している姿がズキズキと胸が痛むのだ。まるで心臓を操られているがごとく#名前2#によってその拍動はいとも簡単に変わってしまう。それの理由を一期とて知らないわけがない。前の主のもとで男に焦がれる女をたくさん見ていたのだ。鏡の奥でこちらを見つめる一期一振という刀は正しく「女」の顔をしていた。だが#名前2#は常々衆道の気はないと叫んでいる男だ。この心を知られてしまえば彼はきっと自分を蔑むだろう。そう思って隠していたのに#名前2#は一期から離れてしまった。これはきっと一期のために#名前2#がわざと離れたのだろうとすぐに分かった。主と画策して#名前2#を振り向かせよう作戦は行動に移す前におじゃんになった。長谷部からこの呑み会に来ないように、と言われた時は僥倖だと思った。自然と#名前2#から離れるいいチャンスである。だが離れたところで長年培ってきた恋心が消えるなんてあるはずもなく。今も未練がましく一期は#名前2#に想いを寄せており、今日作戦を開こうというのだ。  #名前2#はつまみ担当であった主の方を向いていた。 「珍しいな、主が人に任せるなんて」 「え? ええ……。たまにはオシャレなのもいいでしょう?」 「……主がオシャレとか。明日は空から魚でも降るんじゃないか」 「殺すわよ、あんた」  軽口をたたきあって酒を呑み交わす2人がうらやましかったが、#名前2#は酒とともにツマミを食べてくれた。仕掛けは上々。仕掛け人たちはほくそ笑んだ。  薬を飲んで#名前2#は眠っている。このまま彼に夜這いをかけて既成事実なるものを作れば#名前2#は一期のものになるのだ。口吸いでもして神気を絡ませるだけでよい。そうすれば翌の朝方#名前2#は必ず契りを交わしてくれる。薬研の計画に協力者である審神者や獅子王は賛意を示し、話を聞いていた同田貫からは#名前2#のことだから切腹でもすんじゃねえのか?と嫌な予感をさせることを言っていたがすべては一期の頑張り次第である。  #名前2#の大帷子をあばき、汗と酒の匂いが香るその胸板に顔をうずめた。一期は滑らかなその肌に触れながら唐突に自分が途方もない馬鹿なことをしているように思えた。好いた相手をだますようなこんな行為。下着のみを着けた己をかんがみて主のようにはなれないのだ、と自嘲した。#名前2#と恋仲になりたいと思ったのはいつだったろうか。もう覚えていない。いつの間にか彼を追いかけていた。長い長い片思い。それを成就するべく乱や主に話を聞いて、薬研に衆道の話も聞いた。負担のかかる女房役は自分がやろう、と素直に思えたのはそれほどまでに#名前2#という刀に心酔しているからだろう。深く息をついて#名前2#の口元に自分のくちびるを寄せた。あとちょっと、というところで一期はピタリと止まった。仏像のように体を固まらせてヒュッと息を吸った。横たわる彼は一期を呆気に取られた顔で見ていた。急いで俯首流涕して「申し訳ありません」と謝った。なにに向けての謝罪なのか自分でもよくわからない。涙が畳に降りかかる。全くみじめな姿だった。 「そいつは何に対しての謝罪なんだ?」  #名前2#は目を閉じていた。一期は聞き間違いかと思いながらもそっと顔を離そうとする。そんなことは許さぬ、とでも言うように頭がつかまれて#名前2#の顔もとに引きずり込まれた。鼻と鼻がつきそうなほどにまで近い顔に一期は顔を真っ赤に染め上げて#名前2#は生娘かとあきれるほどだった。 「なあ、何に対してだ?」  #名前2#の言葉に一期はあぐあぐと口を開け閉じし、少し間を置いて静かに「私の、気持ちに対してです」と言った。 「お前の?」 「はい」  一期はとても申し訳なかった。#名前2#のことが恋しいと思いながらもだましている。みじめで哀れで#名前2#の目前にいる今も恥ずかしさでどこかへ消えてしまいたかった。 「それがいったいなんなのか、俺は聞いてもいいのか?」  一期はまるで火をつかれたように顔をふるわせた。頭がつかまれているのでうまい様に動かない。#名前2#はまた目をつむる。一期にとってそれは全身全霊での拒否のごとく思えた。一期は無理やりに布団からずり落ちて正座しなおす。寮の手を腿の上に深呼吸をして頭を垂れた。 「貴方様を思い、恋い焦がれ悩んでいるのです。私のことが嫌いであるとしても、この情は到底抑えきれぬものでございましょう。刹那の恋と一笑に付してくだされ。どうか私に一晩だけの情けを戴けぬでしょうか?」  これが一期のできる精一杯であった。  さて、どうしたものか。#名前2#は目を閉じて思案していた。一晩だけの仮初の恋と、か。先の宴ではなかった妙なものを感じている。顔があかい。動機が早まる。どうにも一期の言葉を信じていいものか分からなかった。ただ一期を信じたいという思いが勝った。体を起こし、自分の大帷子を一期にかけてやった。 「一期、俺は昔の主がお前のようなキレイな女に恋をして冷笑され女を斬り殺した。そのあとは落ちぶれてみじめに終わったことをいまだに覚えている。人を信じやすい馬鹿な男だと言えばそれまでだが、刀の俺はその女を殺した時の感情がいまだに残っているらしい。俺はお前に恋をしていない。おそらくお前に美しさを感じている限り恋をしないだろう。だが純粋な好意といとしいと思う気持ちが首をもたげた」  それでも抱いてほしいのか、と問う#名前2#に一期は涙ながらに懇願した。そばに置いてほしいのだ、と。清らかな愛だった。劣情を抱くといってもそう起こさせる心が人間の中で最も聖いものだ。#名前2#は空色のように輝く髪の毛をなでながら顔を近づけた。 「お前のことがこんなにも愛おしいなんてな」  上から注がれる#名前2#の目は確かに情があふれている。#名前2#は薄目で少し笑って、つかんだ一期の手から下るように額、まぶた、ほお、首もとと下っていく。そっと体が誘導されて布団のもとに倒れた。それでも口吸いはしてくれなかった。舌が肌に触れる度にじわりと熱が広がる。先ほどまでの空虚さはどこにもなかった。長い首と色白な肌、花街の女どもには喜ばれた。だが#名前2#にはどうなのだろうか。女のようなまろい体も、脂ののった豊満な胸も、ましてや#名前2#の子種を受け止める器官すらも一期にはない。こんな体で#名前2#に愛してもらえるのか心配だった。だがそんな心配も杞憂に終わる。唐突に下着に手をかけられたのだ。恥ずかしさで思わずその手をとめた。 「あ、の…」  #名前2#は一期の続きを根気よく待っていた。一期はというと言いたいことも言えずに#名前2#のみが優しく待ってくれている状況に泣きたくなった。  大きく息を吸い込んで「#名前2#は、私では何も感じないのでは」という。その胸には恐怖と焦りが入り混じった何かが体を圧し締めてくる。ああこわい。言わなかった方がどうかしてしまう。  #名前2#に一期の気持ちが届いたのか#名前2#は接吻をほどこした。下にいる一期に#名前2#の神気をまとったそれがどろりと流れ込んできて飲み込もうとするのに#名前2#の舌に追いつこうとして何をしたいのかしまいにはわからなくなった。しとどに濡れた下あごをちろりと舐められて#名前2#は穏やかに微笑んだ。 「一期、お前は可愛い。本当だ」  一期も微笑んだ。#名前2#の目の奥に熱が垣間見えている。もう少し、もう少しだ。吐息を混ぜるように「交わしましょう」と囁いた。  ほどよく筋肉の付いた乳房に#名前2#が吸い付く。愛する男にめでられることがこんなにも嬉しいことだったとは。一なめされるごとにほどけてゆきそうな心を必死にからげておしとどめた。  「なんだ、手を噛んじまって」  #名前2#は一期の手を外しそっとやめてくれ、と笑った。「お前の瀟洒な肌にかみついていたら俺が嫉妬する」と。甘言と知っていても一期はそれに従わざるをえなかった。仮初の恋としても、ここまでの甘い夢を見れるとは。幸せで胸が高鳴り、心の臓は何かにつかまれたようである。これが、ずっと続いてくれればいいのに。一期は心の深奥なるところで泣いていた。  すっかりと一期はとろけていた。潤びた、とちっても過言ではない。#名前2#の愛撫に体はどんどんと変わっていった。自分のもの以外の神気を帯びるとはこういうことなのか。主はいつもこんな思いで長谷部殿と枕を交わしていたのか。いいなあ、あの二人は通じ合っていて。通じ合うことのない私達には幸せすぎてもはや残酷な仕打ちだ。 **  #名前2#は一期の下着を慎重にぬきとった。ほのかな行燈の光が一期の鼠蹊を照らしている。つややかな髪と同じ色をした下端絵を勃ちあがった陰茎とが不相応にみえてそれでいて濃艶な雰囲気を醸し出すのだから世の中は不思議なものである。#名前2#は揺らしたのどに興奮に似た何かを感じた。いや、それはもうずいぶんと前から感じていた気もする。慎重に、それでいて鈍重な動きと思われぬよう気を付けて手をこすり合わせるように押し当てた。他人の性器が手にすっぽりと収まりじわじわと熱を広げる。少しだけ、と囁いて優しくこすると一期は「ふわぁ」とあられもない声をあげた。#名前2#は「おひぃさんのようだな」と笑っていた。みだりに動く手が一期の先走りをこすり付けて「果てたいのだろう?」と意地悪く聞いてきた。小さくうなずいた一期に合わせて#名前2#の手が早まった。濡れた音が目をふさいだ一期の耳に敏感に届いてくる。開いたそこに熱をもった#名前2#がいて、閉じれば音が一期を恥ずかしさに突き落とす。2つに1つだった。  #名前2#の手が菊門をかすめるたびに腰がゆらめいて自分だけがとにかく弄されているようで心の底の涙はそろそろ甕をもあふれそうだった。それでもなお彼は涙を流さなかった。涙で引き留めて契りを交わすのは刀の本意ではないのだ。一期は涙こそないが心のせき止める何かは壊れてしまった。「お前さま」と唇が動いた。それは何とも言えぬ甘い音だった。#名前2#は少し手を留めてから先ほどと変わらない口調で「おまえはここが気持ちいいのかい?」と根元を強く押された。どくり、と心臓が高鳴る。力は抜けて息はふぅふぅと酸素を求めている。また果てたのか、とわかったのは数秒後のことだった。一度目の余韻も相まって体の奥がびくびくと震える。#名前2#が菊門をそっとなでる。指があつい。#名前2#も興奮しているのだ。ちらり、と開いた目には欲を焦がした#名前2#が一期に近づいてきていた。  「お前はいいのか?」  最後の問いかけに一期は強くうなずいた。この一夜の思い出だけでこの本丸に来たことを良しと思える。次の日に刀を折るにしても本望だ。  「お前さま、いれてください。ーーほかならぬあなたに傷をつけてほしいのです」  #名前2#は剛直にあがったそれをそえて耳元で囁いた。  「痛かったら俺の舌を噛んでしまえ。おまえの痛みは俺が引き取ろう」  「いいえ、…それはなりません」  「……なんでだ」  「ならぬものはならぬのです」  一期の強い物言いに#名前2#もついにはあきらめて「ならば背中をつかんでいろ。欲が張っていると思われるかもしれないがおまえをつないでおきたいのだ」  一期はうなずき笑った。「放してなんかやりませぬぞ」死にそうなくらい幸せだった。   **   「ひぃっ…う、あん…!」  一期はその気持ちよさに心は高ぶり自分は何度果てたか分からなかった。#名前2#は気を遣ってくれたのか挿れる前から神気が一期の体を包み痛みを和らげていた。奥深くえぐられるたびに回ってくる#名前2#のにおいとときたま呼ばれる「一期」という声が心をかき乱していく。一方で#名前2#はまだ一度も果てていなかった。というよりは、出すことをためらっている様子だった。一期には聞いてみたい気持ちもあったのだが突かれるたびに頭が真っ白になり口からは唾と喘ぎ声がとめどめなく出てくるばかりだった。  「出しては、くれぬのですか?」  一期がようやくの思い出出した言葉に#名前2#は少し悲しそうな顔をした。  「素面で思いを告げることのできない俺は、お前を手籠めにすることすらもためらわれるんだよ」  #名前2#はやさしく、とても哀れな男だった。  結局#名前2#は一期の懇願に耐えられず腹の上で果てた。果てた後は素早く片づけを行い、一期に寝るように促した。うつむいたまま首を横に振った細君を#名前2#は仕方なく抱きしめて床についた。夢では彼は弟たちと笑いながら己の名を呼んでいた。それに返事をすることはできなかった。 **  朝早く#名前2#はぐずる一期を横抱きにして主のもとへ行った。個人用の風呂はそこにしかなかったのだ。障子の奥からはくぐもった主の声と、速く行けという思いが込められた長谷部の声がした。昨夜もまた彼は主を抱きつぶしたのだろうか。#名前2#は一言礼を言って風呂場へ向かった。白く、冷たい浴槽だった。前に主にこれの使い方を教わっていることが役に立つとはなあ、と感慨を持ちながら#名前2#はボタンを押した。湯気を出しながら熱い湯がだばだばと出てくる。温度をたしかめたのち#名前2#は上の服を脱いで一期をとにかく座らせた。二人とも無言で体を洗い流した。一期は泣きはらした顔で#名前2#を見たり、湯を見たり落ち着かない様子だった。一通り体をふいたあとで#名前2#は一期を風呂に入れる。  「あったまら出てきな」  とにかく腹が減っている。燭台切は花街に出た後はなかなか帰ってこないので今日の飯は歌仙と堀川が担当だろうとあたりをつけながら服を着なおした。一期のために自分の内番の服を脱衣所に置いて台所へ急ぐ。  「お? おぉ! #名前2#、起きたがやな」  廊下の向こうで陸奥守が笑っていた。彼は主の初期刀であるため昔は#名前2#とよく一緒に出陣していた。彼は花街にいっては酒の飲み比べをして泥酔するので二日酔いもなにもない彼を見るのは新鮮な気分だ。  というか。  「なんなんだ、その待っていたっていう雰囲気は」  「何って。おんしゃあがようやく、一期一振と情を交えたっちゅうてたぬたちが言っておったぞ?」  「……はあ?」  「なんじゃ、違うんか? 歌仙も燭台切も張り切って赤飯炊いたちゅうんに」  戦場では見せないような機動の速さで#名前2#は薬研のもとに駆けてきた。彼は医務室にでん、と構えてきたな#名前2#の旦那。と笑う。  「お前が一期を差し向けたんだな」  「俺っちと乱が、だな。旦那が言い訳していち兄を遠ざけるから、こんなふうにこじれちまうんだ」  ぐぬ、と#名前2#は何も言い返せなかった。自分と一期の恋路が主と長谷部の恋路と混ざってこじれにこじれたのを放置していたのは自分という自覚があった。だが、どうにも言葉にすることは難しく#名前2#は先ほどまでずっと逃げてきていた。これは恋ではないのだ、と。だがあの一期を見てからはもうダメだ。遥か昔にかき消していたであろう思いがまたくすぶり始めてしまったのだから。  「……礼を言う代わりに、粟田口(お前たち)に謝っておく。お前たちの長兄は俺が貰い受ける」  「構わん。それが兄の望みだ」  薬研藤四郎の男前さにはほとほと頭が下がる。#名前2#はにんまりと笑ってまた駆け出した。  主のもとからはいなくなっていた一期を追いかけることはたやすかった。自分の神気を帯びている彼はなぜか#名前2#の自室にいた。音を鳴らして障子をあけたそこには肩を震わせて泣く一期の姿があった。  「一期」そう呼びかけると彼は肩をゆらして「どうかしたのですか、#名前2#殿」と冷たい様な声を出した。昨日の口調とは違うそれに#名前2#は眉をしかめた。だがまだ自分の思いを告げていない己のせいだと思うととても申し訳なかった。足をそろえて座り、昨日の一期のように居住まいを正してから頭をさげた。  「もう俺のことを嫌いになっているかもしれん。だが、これだけは言わせてほしい。俺はお前に隣にいてほしい。俺の、細君になってほしい」  #名前2#は言い終わった後も顔をあげなかった。ふわりと柔らかな手が触れて初めて顔をあげた。一期は顔を真っ赤にしてこちらをじっと見ている。  「今の言葉に嘘、偽りはありませんな?」  「応」  その言葉を聞くや否や一期は#名前2#の首にしがみついた。  「ごめ、なさい! あなたをだまそうとした私なのに!」  「俺の方こそ臆病ですまなかった。俺にめとられる決意をしてくれてありがとう、一期」  空色の髪の毛をした刀剣は泣きながら何度も強くうなずいた。#名前2#と一期を呼ぶ声が遠くから聞こえてきた。