嘘つきの舌は甘いか
#名前1#という一族は手広い輸送業をやっていることで有名だ。色んな種族とも渡り合ってスーパーなどの輸送と個人での宅配と両方をこなしている。元々が翼を生かした仕事だったようだが、それがいつしか一族の仕事になっていたらしい。 らしい、というのはオレはそこまで#名前2#を知っているわけじゃないということ。彼について知っているのは#名前1#家の14番目の当主であり、NRCとの提携を切った男だということ。 「クロウリー先生、今回もまた#名前1#には断られたんだって?」 「ぐぅっっ……。はい、そのようです……」 「どうしてウチが急に切られることになったんでしょうかね」 「そんなこと! わたしがいっっちばん知りたいです……!」 「校長が何かしているわけじゃなくてですか?」 「もちろんです!!」 「ふうん……」 まあ、何もしてないだろうことは分かるけれど。それでも不便であることに変わりはない。いつかちゃんと話し合う場を設けたいと思っていた。 フェアリーガラが起きたことはある意味NRCにとって不幸なことだったが、サムにとっては便利とも思えた。なにせ妖精たちが頼りにしているのも#名前1#だったからだ。ここで当主の#名前2#が出てきたらちょうどいい。話がつけられる。 イデアにクーポンを与える代わりに#名前2#・#名前1#が学校に来ないか確認してもらったところ、予想していた通り彼はやってきた。 ハロー。声をかけると#名前2#はビックリした顔をしていた。妖精たちに先に行くように声をかけてサムと話す準備をした#名前2#は昔と変わらない姿だった。 「サムさん、お久しぶりです」 「久しぶり……と好意的に行きたいけどね。そういう訳にもいかないんだ」 「……NRCでの搬送を断ったことですか?」 「そう。どうしても理由をちゃんと聞いておきたい」 「どうしてですか?」 「どうして、って……」 そんなふうに理由を聞かれると困ってしまう。別に今は#名前1#だけがシェア率ナンバーワンでもない。色んな企業が立ち上がり、今は別のところと契約している。 「……ロッソには、伝えてあるはずですが」 「それはもう聞いてるよ、でも納得できなかったから……」 「まあ、あれは嘘なんですが」 「……嘘なんじゃないか」 「ははは」 #名前2#は人好きするような笑顔を浮かべた。ぽん、と翼を広げて羽を1枚ちぎった。痛くないの、と聞いた時彼は子どもに話しかけるような優しい声で「大丈夫ですよ、おれたち一族の特徴なんです」と言っていた。そのときもらった羽はずっと机の中の小箱にしまわれている。 「実はですね、おれたち一族の中には厳密なルールがありまして」 「あぁ……」 それはサムも思い当たるところがあった。使うダンボールの種類なども細かく決められている代わりに中身は絶対に壊れないし汚されることもない。ものすごく中身の状態が良いということで彼らに頼む人が多いのだ。 サムの顔を見て#名前2#はふっと笑った。穏やかで、昔羽について教えてくれた時のような笑みだった。 「多分、思い浮かべているのはお客にお願いしてる方だと思うんですけど。それよりももっと一族の、従事する人間には厳しいんです」 「へぇ」 「羽がとれるのは、荷物をちゃんと送るためにいつかの先代が考えたものでして。それがあると、魔法が発動するようにしてあるんです」 話の流れ的になんだか不穏な気がしてきた。サムの頭の中に小箱にしまったあの羽が思い浮かばれる。だが、あれをもらったあとも仕事は続けていたし、提携を断られたのは数年後だったはずだ。 「厳密なルールはですね、おれたち一族は自分の力を他人のために使うべきであって自分たちは後回しにしろ、と。そういう魔法というか呪いですね。かけられているんですよ」 「……もしかして」 「ずっとサムさんが羽を持たれてたので、どうやら先代の魔法が一族判定されたらしくて」 サムの顔が赤くなるのと同時に#名前2#の方も顔が赤くなった。 「そっかあ……」 「はい……」 「……それって、ファレルは知ってるの?」 「いや、知らないと思いますけど。ただ、まあ……。表情的に察していたかも……」 「そっか……」 いい歳した男たちの恋を見せられて彼がなんと思ったのか分からないが、サムはもうあの羽を捨てる気にもなれない。それなら仕方がない、と割り切る気持ちになった。クロウリー先生には適当に言っておこう。 「じゃあ、宅配とか搬送とか。そういうの関係なく、連絡先交換するのってあり?」 サムが取り出した携帯を見て#名前2#は笑って頷いた。