律儀過ぎてもよくないもの

【園児】  早熟な私の将来の夢は#名前2#さんの嫁になることだった。それを親に言うと「絶対に他の人には言うな」と怒られた。 「いーい、綺礼は絶対に#名前2#さんとは結婚できないのよ」  母がそんなことを言い出して煩わしくなりいつも飲んでいた薬を隠すようになった。入院しがちな母の代わりに#名前2#さんが家に来るようになった。私は純粋に楽しんでいた。 「ごめんなあ、綺礼。母さんはまだ病院だから…….」 「うーうん。#名前2#さん、うれしい」 「えへへ、綺礼は可愛いなあー!」  可愛い綺礼のこと離しちゃだめだよ、と言うと#名前2#さんは笑っていた。うんと頷いてくれないことに泣いた。  お前が大人になっても俺のことを好きでいたらお嫁さんにしてやろう。  #名前2#さんにこっそりと夢を伝えたらそう言われた。大人になることも教えて貰った。その約束は私の全てだった。 【小学生】  女の子たちが恋愛に興味を持ち始めた。私の世界は相変わらず#名前2#さんだった。お嫁さんになる前に、と寝ている間に唇をくっつけた。#名前2#さんは起きなかった。一緒に寝る#名前2#さんの手を借りて自分の体をまさぐった。性的な知識は曖昧にしか持っておらず、胸にあてただけで恥ずかしくなった。  初めて夢精したとき#名前2#さんが相手だった。あの手の感触だけは本物を再現するようで、優しくなっているようで、恋をしたのだとなぜか実感していた。  性教育を受ける相手が#名前2#さんだったらいいのに、と夢精で汚れた下着を見ながらそう思った。 「父さん。#名前2#さんは次はいつ来ますか」 「……三日前に来たばかりじゃないか」 「いつ、来ますか」 「………。連絡しておこう」 「はい」  #名前2#さんは電話をもらってもなかなか来なかった。久々に会えたのはそれから2週間後。玄関でずっと待っていた私に#名前2#さんは「ごめんごめん」と笑っていた。 「許しません。なんでもっと早く来てくれないんですか」 「仕事が忙しくてなあ。……あー、どうしたら許してくれる?」 「じゃあキスしてください」  いつもは私からしかしてないですと心の中で言う。#名前2#さんは苦笑いして私のつむじにキスをした。 「ほい、これでいいな」  唇じゃなきゃダメです!と言いたかったが恥ずかしくてダメだった。#名前2#さんから初めてキスされた気がする。 【中学生】  父の調子が悪い。今回、私は何もしていない。いや、話しかけることが遠因になったのだろうか。#名前2#さんが来ることを待っていただけなのに。父は自分の意思で延命治療を断り、私を#名前2#さんのもとへ行けるように手配してくれた。わがままを言ってすみませんと謝る私に父は頭を撫でて「幸せになりなさい」と言ってくれた。  #名前2#さんに甘えられる日々が始まったと思ったのに、仕事で忙しい#名前2#さんと学校のある私では生活リズムが違っていた。理想と現実は違うと誰かに聞いたことがある。理想に近づける努力をしないで、何が違うんだろうか。#名前2#さんのための下手くそな家事をして、わざわざ一緒の布団で寝るようにして、たまに泣き真似をしてみせて。努力は身を結ぶ。#名前2#さんの性的嗜好を知れたり、性教育をしてもらうことだって出来た。義理の親子としてのラインギリギリだったが、人に興味を持つことが少ない#名前2#さんには疑問視することもなかったらしい。 「女性の体を見ていやらしい気持ちになることは普通なんだよ、綺礼」 「#名前2#さんも、そういう気持ちになりますか」 「ンッ!? んー、そうだなあ。ないとは言えないけど……。あ、でも綺礼がいる間はそんな人呼ばないし!」  当たり前だ。そんな女が来たら精神を叩き折る。その後#名前2#さんが話を終わらせようとしたので突っ込んだ話をするよう差し向けた。  #名前2#さんの口から卑猥な単語を聞かされる。勃起、射精、自慰、セックス。女性との話を聞かされているのに頭に浮かぶのは#名前2#さんと自分のことばかり。 「#名前2#さん、」 「ん?」 「……いえ、何でもないです」  #名前2#さんは女性にしか興味が無い。ここに私が何か言うのは勘繰られる気がしたし、薮蛇になりそうだった。 【高校生】  #名前2#さんに恥じないよう好成績を残すつもりだった。受験に有利になるよう学業以外のことも頑張っていた。  周りの彼女自慢を聞き流しながら#名前2#さんについて考えた。理性的な彼は体から落とした方がいい気がする。男性同士のセックスの仕方も検索した。アナルを使うらしいことも。体の柔軟性も鍛えたし、体の中の洗浄も覚えた。あとはテクニックだが……。#名前2#さん以外の人に体を開くなんて出来ないだろう。さて、どうするか。 「きーれい。お前、呼び出しだぞ」 「……お前、金を渡すから断ってきてくれないか」 「流石にそれはねえよ……」  クラスメイトは釣れなかった。仕方なく呼び出しに応じた。1度、教室でフッたら相当に#名前2#さんにも叱られることとなったのでやめている。クラスメイトと#名前2#さんが知り合いになっているのが許せないがコンビニで何を買っているのか教えてくれるので仕方ない。#名前2#さんはレシートを捨ててしまうから調べられないのだ。 「話はなんだ」 「えっとぉ……あの、私……」 「告白なら早くしてくれるか。私にはもう好きな人がいる。受け入れることは無い」  女子生徒が固まった。少し待っても動かないので無視して置いてきた。 「きーれーえー。まーた、女子をフッたのか。お前、モテるんだから少しは優しくしてやれよ。社会人になったら女子の恐ろしさ感じるぞー」 「……#名前2#さんは、女性をフラないんですか?」 「ん? んー、まあ俺はモテないからさぁ」 「好きな人は?」 「は?」 「……私の母親候補はもういるのかと思いまして」 「あはは、ないない。綺礼はまだ子どもだろー? 大人になるまでそういうのないって」  なるほど。大人になったらもうタイムオーバー。それまでに#名前2#さんとセックスしよう。目標が決まった。 「#名前2#さん、私頑張ります」 「? おーう」 「なので今日は一緒に寝てください」 「お前はそろそろ親離れしてくれよ……。男二人がくっついて寝るって相当絵面がひどいぞ……」  #名前2#さんは朝勃ちを気にしているらしいがあれはストレス解消のための体の生理的反応なので気にする必要はないと思う。それに、あれは夜に勃ったものが朝まで続くのだ。夜に確認しているのなら朝も見ようが関係ない。朝も見れたら嬉しいな、と思うくらいだ。 【大学生】  目標通りの大学。国立のハイレベルの学校だ。実践的かどうかは分からないが商学部にした。#名前2#さんと同じ大学ではないが、せめて同じことを勉強したかった。  ネット注文も便利になって今では駅で受け取ることも可能だ。セックスの準備はここでした。#名前2#さん用にもコンドームが必要かと思ったが、サイズも分からないし今はまだいいと頭を振った。タイムリミットは刻刻と迫ってくる。#名前2#さんを落とすチャンスは1度のみ。それを失敗する訳には行かない。  夜のバイトも始めた。#名前2#さんよりも遅くなってベッドに入ることもあった。小学生のときのようなキスではなく唇の中に舌を入れるキス。起きないように睡眠薬も気をつけている。理性的な体を快感によって落とし込む。自分のやっていることが犯罪なんてどうでもいい。#名前2#さんとならば、なんでもいい。 「愛しています、#名前2#さん」 【社会人】  タイムオーバーはもうすぐそこにある。これで拒否されたら俺はもう死んだと同義だ。準備をしたアナルが濡れた音を出す。  金はある。気持ちもある。あとは#名前2#さんがあの約束のことを覚えているかどうか。いや、覚えていなくても構わない。#名前2#さんとセックスしてもいい権利はとうの昔に決められていた。  俺の事を押し返そうとする#名前2#さんに言ってやる。 「何言ってるんですか、#名前2#さんが言ったんですよ。大人になったらお嫁さんにしてくれるって。ずっとお預け食らってたんですから。もうほぐしてきましたよ。#名前2#さんのちんぽを食べたいって体が疼くんです。#名前2#さんだって最近は抜いてないでしょう?」