伝わらないよね、こんな曖昧じゃ

 書き手としては女主×峰不二子  →受け攻め、好きに読んでください  銭形警部の部下が何人か出てきます。オスカー生きてるって信じてる。  日本人女性主  私の友達に、峰不二子という人がいる。いつも可愛くていつも私に優しい、とても素晴らしい人だ。卑屈な頃の自分は「不二子の友達なんて」と思っている時もあったけれど、今では胸を張って友達といえる。自分が可愛くないとか、結構趣味に走った生活をしてるだとか、男の人に興味なくていまだに処女のままだとか、不二子という女性の友達としては似つかわしくない自覚はあるけれど、彼女が私を「友達」と呼んでくれたから私は友達のままだ。  そんな素晴らしい彼女は、世界的に有名な、泥棒である。  彼女との出会いは私がとある聖地巡りと称してアメリカ、ニューヨークでワイワイしていたところである。その時から彼女はとても可愛くてニューヨークという混雑した世界に突然生まれた宝石のようだった。きっと誰もが彼女に出会えたことを「運命」と呼ぶんじゃないかと思うくらいに衝撃的な出会いをふりまいて彼女は歩いていた。私は彼女を見ていただけ。でも、不二子の方は私をその時に見つけたらしい、 「運命なんて信じてなかったけどね、」と不二子は笑ってたけど私も同じ気持ちだ。運命なんて信じてなかったけど、まさか本当にそのまま友達になるなんて思わなかった。自分の会社の待遇が変わったとか取引先のラインナップが変わったとか、何か気になることはあるのだけれどひとまずは聞かないことにしている。  不二子と出会った時の私は彼氏がいた。優しそうな人……と言えば分かりやすく「とりあえず褒めてる言葉」になるような、そんな男だった。顔も普通、性格はオタクっぽくてわりと身内とか内輪に対してうるさい、仕事はまあまあな人だった。妥協して選ばれたような恋人関係だった。  ある日、不二子と歩いている私を見かけたという彼が「なんでお前なんかが!」と言い出したのでふった。残念、不二子はお前みたいなやつは好きにならないぞと本気で言いそうになった。フラれたということを認めたくなかったのか、彼はその後ツイッターで私をブロックしてずっと悪口を言っていると聞いている。しそうな人だったし予想はついたがそれを伝えてきた自称友人の女の人の方が苦手だなあと思った。  元からそこまで好きな人じゃなかったし、と言い訳のような言葉を連ねて不二子にフリーになった報告をした。彼女はそれを聞いてすごく喜んでいた。海外生活が長いせいか、彼女の素直な心は元からそうなのか、子どものようにはしゃいで喜んでくれる彼女を見ながら私も笑顔になった。 「#名前2#にはあんな男似合わないもの!!」 「そうだね~~。私はもっと素敵な人を見つけることにする~」 「あっ、で、でもほら! 男だけが世の中全てじゃないじゃない? ねえ、今日は呑みましょうよ」 「えっ、今日は不二子のお相手の方は大丈夫??」 「もっちろん! #名前2#とせっかく通話してるのに邪魔されたら困るでしょ?」  なるほど。この通話の中でかすかに聞こえているバイブの音と呻き声から察するに今日の不二子はSMの女王様だろうか。それにしては、 「今日のジャケットめっちゃ可愛い。不二子にしては珍しいね」 「ああこれ……。#名前2#、前に観た映画でスーツの女性たちに憧れてたじゃない? だから今度一緒にジャケットお揃いコーデでもしないかなあって」 「えっ、したいしたい!」  不二子の着る洋服だからきっととても高いものだろう。ジャケットといえばユニクロの私とは違って。でも不二子のプロポーションだったらジャケットもすごく似合うだろうし、お揃いにしてくれるのは素直に嬉しかった。 「よかった。ね、ねえ……。#名前2#、今日の私はどうかしら」 「え? いつも通り可愛いよ」 「んもう! そうじゃなくて。映画のあの人たちと比べたらどう?ってこと」   不二子はいつだって可愛いと思う。私の真面目くさった言葉に不二子は「あの女優さんたちにだって負けないんだから!」と何かブツブツ言い始めてしまった。あの映画もステキだったけど、私は不二子のハーレーに乗る姿も好きだし私のヴェスパに乗って一緒にローマの休日ごっこをしてくれる不二子が好きだ。そこには何の比較も必要ない気がした。 「不二子には不二子のよさがあるよ」 「そういうことじゃないの!!!」  バイブ音と男の人のくぐもった喘ぎ声を聞きながら不二子ってたまに変なこと言い出すよなあと思った。  不二子に飲もうよ、と誘うといそいそとワインを用意した。彼女は高そうなワインとワイングラス。私はスーパーで買った缶チューハイをそのまま。昔は不二子も私に合わせようとしたりだとか、私が背伸びしようとしたりだとかしていたけれど、今はお互いに好きなものを飲む姿が一番好きと納得した。合わせてくれるのはとても嬉しいことだし、それを無碍にするわけではないけれど、好きなことをしている姿が一番好きという気持ちもあるのだ。 「不二子は今は盗みはしてないの?」 「してないわ。#名前2#に繋がったら困るもの」 「私は銭形警部たちとお話するの嫌じゃないけどねえ」 「私が嫌なの!! あのオスカーってやつも八咫烏ってやつも…… 特に八咫烏の方よ! へらへら笑ってあなたに話しかけるじゃない!」 「彼いい人だよ……」 「男はみんな怖いの!!」  じゃあ不二子に悩殺された男たちは怖くないねえ、と笑ったら不二子は自慢げな顔で「そりゃあそうだけどあんなクズたちと#名前2#は似合わないもの」と言った。クズとセックスしている自覚はあるらしい。  不二子が言うほど八咫烏さんは下心はないと思う。いつもお疲れ様ですーという顔をしているし、オスカーさんは銭形警部一筋である。彼らと付き合うだなんてイメージできない。というか、彼氏と別れたばかりなのに。    ◇ ◇ ◇  会社近くの牛丼屋に寄ってはいけない。今日、私は学んだ。まさか元カレが同じ店に立ち寄るとは思わなかった。元取引先だしほういうこともあるのか。なるほど。彼は私を見てうわっという顔をしたあと遠く離れた席に座った。私の方はとある人と待ち合わせである。向こうが牛丼屋に興味があると言い出したので会社終わりに連れてこようとしたのだ。はてさて、元カレさんの延々と流れてくる愚痴を聞き流しながら牛丼の並を食べていたら自動ドアが開いて人々の「ほぉ」と嘆息する声が聞こえた。きっと彼だろう。そう思って目を向けると意外なことに、不二子がいた。いや、待ち合わせ相手のオスカーさんもいる。オスカーさんって不二子のこと唾棄って言葉が似合うくらいに嫌いじゃなかったっけ。 「#名前1#、まだ食べてるのか」 「ご、ごめんなさい」 「いや、いい。僕も食べてく」 「あら、じゃあアタシも食べようかしら」 「豚女、お前と手を組むのはここまでと言っただろう」 「いいじゃない折角なんだから」  オスカーさんと不二子の2人が来ると牛丼屋もなんだか一層華やかになる。元カレはやっぱり唖然とした顔で私を見ていて「いい気味だ」と思う反面、私はやっぱり彼にナメられたままなのだろうかとしょげた気分になった。もう少しの牛丼をさっさと食べ終えて2人には持ち帰り用の牛丼を購入させた。家に行きましょう、と誘うと2人は文句をお互いに対して言いながらも着いてきてくれた。 「あのお、オスカーさんってなんで牛丼を食べたかったんですか?」 「そうよね。アンタみたいな子どもっぽい人が食べに来るなんて意外だわ」 「銭形警部が故郷の味を思い出した、と言っておられて。それを、あの、やかましい豚野郎が頷いたものだから警部が……!!」 「なるほど。八咫烏さんと銭形警部の共有した話題に入れなくて食べに来たんですねわざわざ」 「日本で食べる味がいい、と銭形警部は仰られていた。水がもしかしたら違うのかもしれない」 「あんたってまーだ銭形のこと愛してるのね。いつか捨てられない?」 「銭形警部が僕を捨てるわけないだろう! お前のような痰壺じゃあるまいし!!!」  友人を痰壺呼ばわりされるのは好ましくないがオスカーさんはそういう人なのである。私も初対面ではミイラ女と呼ばれていたし銭形警部に色目を使うな、と脅されていた。のらりくらりと躱していたら彼から「銭形警部の愛を語っても大丈夫な人間」と判定されて今に至る。とてもめんどくさい私の友人の1人だ。 「不二子はどうしてこっちに? 前に通話した時はえっとー……」 「モナコにいたの。#名前2#とこのメンヘラちゃんと会うって言うから心配で来ちゃった」  来ちゃった、ってどういうことだ。不二子のアグレッシブさにはほとほと私の考えがついていけない。オスカーさんからすごく可哀想な目付きで見られている。 「ミイラ女、友人は選んだ方がいいぞ」 「失礼ね! #名前2#の友人にもなれないメンヘラちゃんには言われたくないのよ!」 「はあああ!!?!? 僕が!!? こいつの友人じゃないって!!?!」  めんどくさい喧嘩が始まり、やっぱりあの店で食事してた方がよかったかなあと後悔した。2人とも友人だし大切だから「どっちが親友か」で争わないで欲しい。