分かれ道はいつものようにそこにあって

 弟であれば王位継承もなく、楽な世界が送れただろう。しかし……双子の弟というのは困ってしまった。双子として存在することが不吉である。しかし替え玉としては優秀である。悩みに悩んだ王族たちは魔法で俺の顔を変えて兄であるカリムに仕えるように言った。  大きくなり本を読み、自分と同じ境遇の子どもが創作として出されるとちょっとだけ悲しくなった。王族でありながら王族でもなく。双子という存在は必ず隠さなければならず。そして………一緒に仕えているジャミルには可哀想な人と思われるのだ。  子どもの頃、どんな家に住みたいかと聞かれた。俺は奥さんとペットの鳥と一緒に住みたいと書いた。ジャミルの方はカリムのために王宮の近くで住みたい、と言った。ジャミルはカリムの方しか見ていない。まあそれは当たり前のことだし、それについて俺が何か言うべきではないのだけれど。それでも、昔の俺はとても幼かった。その時のジャミルは俺の事情を知らないとしても、王宮には近づいてはならないと命令されていた俺は泣いてしまった。ジャミルは俺のことを慰めるように「お前も王宮に行けばいいじゃないか」と言った。王宮内で双子が揃うことはあってはならない。ジャミルは残酷だ。  従者ではあるけれど、ジャミルたち……カリムとジャミルと離れて良かったのかもしれない。俺は昔ほど嫉妬心を煽られたり、カリムやジャミルの悪意のない言葉に苦しめられることも無くなった。合同授業の時はカリムたちのもとに近寄ることはあるが、それでも昔ほど「好きな人と兄の強い関係性」に頭を引きずられることもなくなった。そういう意味ではある意味、寮生活はかなり過ごしやすかった。  それでも恋ってやつは、どうしても生まれてしまうものである。俺は今でもジャミルのことが好きだし兄のことは大切で、それでいてちょっとだけ面倒臭いなあと思っている。  体が資本、といつも命令されていて俺は弁当を作っていた。ひとりで木登りをしていつも食べているのだが、そこからだと中庭で食べるジャミルとカリムを見つけることがある。2人がわーわーきゃーきゃー楽しそうにしているのを見ると俺は羨ましさと同時にカリムはいいよなぁ、と思ってしまう。一応、血縁関係的には兄であるが俺にはカリムは兄とは思えなかった。幼い頃から色々とあったけれど、長兄の運命であると言われると子どもは何も言い返せない。くそったれ!!と叫ぶことも許されない。  カリムは長兄だし、ジャミルはカリムに仕えるものだし、俺もまたカリムに仕える存在である。 「ジャミル、このサンドイッチめちゃくちゃ上手い」 「そうか? ありがとう」 「#名前2#も故郷の味が恋しくなったりしないのかなー。あいつは食堂で食えるもんなあ」 「どうだろうな、今度聞いてみたらどうだ?」 「そうだよな!! #名前2#とのクラスの合同授業って次はいつあるんだっけ」 「あー……来週の木曜じゃないか?」  きた。悪意のない会話が聞こえた。悲しくなるけれど俺は万が一カリムのことが狙われないように、いわゆる隠れ蓑として俺は生かされているのである。自堕落になるな、と命令されて毎朝早起きしてキッチンを借りて料理して弁当を作ってるだなんて兄たちは知らないのだ。いや、ジャミルは知っているのかもしれない。父たちの信頼を彼は獲得しているから。そう考えると、つまり、めんどくさい説明したくないからジャミルはなあなあに流しているのか。辛い。好きな人にそんな扱いされるってどうよ。  これは話を合わせた方がいいのか、それとも流した方がいいのか。面倒くさくなってカリムに話しかけられた時は「たまに弁当作りますよ、俺も故郷の味が恋しくなっちゃいますんで」と笑って返したらカリムは「お前もそうなんだなー!」と喜んで、ジャミルは驚いたような顔をしていた。別にいつも弁当でもないので嘘はついていない。ちょっと、故郷の味を思い出す回数が多いだけである。ジャミルが俺にも呆気にとられた顔をするのが面白くて「食堂でなにか食べたかったらボロネーゼパスタがオススメだよ」とさらに言ってやった。こうなるとジャミルも嫌がらせされてる、と気づいたらしい。カリムから見えない角度で「しね」とフィンガーポーズをしてきて笑った。ようやく俺はジャミルの本音を見れた気がする。