不自由なのも愛です受け取れ
プロシュートのようないい男はラブレターの日についても女を口説く術もみぃんな持ってはいるがこの男のこととなるととても不器用だった。その責任の一端には自分もあるだろうが、それを棚に上げても彼らは可哀想でならなかった。#名前2#によるとプロシュートは「ペッシのこととなると人間に変わる」らしい。だからといって彼らが恋愛関係になっていけない理由ではない。それにペッシから見たら彼らは十分に人間で恋人同士だった。 ペッシがチームに入るずっと昔から#名前2#はギャングの中でも名前が知られていた。大抵のチームは彼のスタンド能力に世話になるからだ。しかし#名前2#は下っ端だった。ボスに目をつけられ無理矢理にギャングに入れられたので出世などの見込みはなかった。彼は幼少期から家族を人質に何十年も働いてきた。既に死んでいる家族のためにずっと金を稼いできた。哀れな男だ。暗殺を担当したのはイルーゾォだった。だが彼の家族はほとんどが最低のヤツらだった。彼らは死んでも世の中が綺麗になるだけだ。あのイルーゾォにまでそう言わせるのだから相当に悲惨な家族だったのだろう。 「あいつは、それでもあの家族を愛してんだよ」 プロシュートの言葉にイルーゾォは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。「うへぇ、聖人君子かってんだよ」 #名前2#は聖人ではない。生きるために仕事をする。人を殺し人を食べる。彼ともう1人、麻薬を生み出すスタンド能力でパッショーネは財を築いているのだ。一生泥沼にハマったまま終わるはずだ、自分たちと同じように。そう考えるとプロシュートは何だか腹の中にすむ熱いものがぐっと落ちる感覚になる。燻ったそれは嫉妬というものだが、プロシュートは今まで1度も恋愛ごとの嫉妬をしたことがなかった。ぴきり、と心の奥で音がしてまたなにか落ちて行く。血液の温度が上がりイライラする気持ちはどんどんと膨らんでしまう。 「おう、仕事は終わりだろ。もう俺は帰るぞ」 アジトから出ていく時に聞こえた声をプロシュートは鼻で笑った。 「誰が恋してるだって?」 結論からいえば誰もがプロシュートは#名前2#に恋してると思っていた。片思いしてる時のプロシュートはすごかったぜ、とホルマジオが笑う。今日は彼の足として仕事を頼まれていたのだ。プロシュート兄貴が片思いというのは想像がつかない。彼はいつもされる側だ。おまけにペッシへのあの近さと言ったら無い。彼は恐らく身内と判断したらずっと側に置きたいタイプだろう。 「無自覚の時はまだよかった、自覚してからが大変だ。なにせ奴さんは口説かれることにも気づかなかった」 「……。本当に?」 「ああ。馬鹿みたいだろ? あんなイイ男が地に跪いて愛の言葉を吐くんだ。それを奴さん、ジョークだって貶しやがった。ソルベとジェラートの怒りが凄まじかったよ、あいつらはプロシュートを応援してたからな」 それでもプロシュートは諦めなかった。愛してると言い続けた。そのうち、向こうがなんで拒否するのかも分かった。 「な、なんでだったんだい?」 「あいつは、自分に自信がなかった。お前と一緒だ、ペッシ」 「……」 「いや、お前に見込みがあるのは本当だぜ? #名前2#もな。ただ、あの男はこう……色々とあった」 「ふぅん」 ペッシは兄貴分のプロシュートがどうやって#名前2#を恋人にしたのか気になり始めた。ほとんどの仕事はプロシュートと共にいるがたまにこうやって違うメンバーとつるむこともある。それを狙って話を聞くことにした。 ギアッチョは話すことなんかねーよ、と鼻で笑った。 「あいつらはな、勝手に自分たちで落とし前つけたんだ。俺達が何か言うことなんかねぇわけよ。てかよー、落とし前ってよぉー、」 「おお、落とし前っていうのは! 値段を落とすことに使われてたけど意味が変わって言って今では後始末するってことになったらしいよ!」 「……そうか」 ギアッチョのイライラの火種は消さなければならない。彼のための無駄な雑学を頭の中にひとつひとつ思い浮かべながら#名前2#とプロシュートがやらかしたこと、その落とし前について考えていた。 イルーゾォは「ああー」と渋い顔をした。話したいような話したくないようなそんな表情だ。うーん、と頭を擦る彼は小声で「プロシュートにバレんなよ?」と釘をさした。 「お、おう」 「あいつはボスのお気に入りだ。下っ端にしておけば愛玩してもほら…使い捨てと思われるだろ?」 なるほど、とペッシでも察した。彼らは、特に#名前2#という男はボスではなくプロシュートを選ぶのに相当にやらかしたらしい。イルーゾォは彼の家族を殺したことをたまに咎めることがあるらしい。 「あんね、あいつってばさ家族に夢を見てるんだよ。最低な母親、あいつを仕込んだ父親、あいつを見捨てた兄弟。そんなのにさ、夢見てるんだ」 「夢……」 「美しい母親、生きる術を教えてくれた父親、優しい兄弟ってな風に。それを全部ぶち壊したのがプロシュートだった」 「……」 プロシュートは身内と決めたらすぐに食ってかかる。これは自分のものだと唾をつけたいのだ。それにしては#名前2#の話はまわりくどかった。一体彼らの間に何があったのだろうか。その方がやけに気になるのだ。 メローネ、ジェラート、そのほかのメンバーに話を聞く前に件の本人がペッシの前に現れた。見目麗しい兄貴のそばに居ると霞むような顔だ。ペッシは自分の顔が醜いことを知っている。#名前2#は自分よりもいくらかマシな顔だと思った。 「ペッシ、こんにちは。#名前2#です」 「え、あ、えっと……」 「君のことはプロシュートから聞いてる。話で聞くよりもよっぽどいい子そうだ、いいなあ。僕も弟分がほしい」 「……ありがとうございます?」 「素直に喜ぶのがいいらしいよ」 #名前2#はぱっと顔をほころばせた。やった、人に教えられたと顔が言っている。可愛らしい人だ、と思った。こんな彼が人の記憶を改ざんし拷問するのかと思うと世の中は不思議だった。 「バール? リストランテ?」 「え?」 「奢るよ、行こう」 #名前2#はペッシの答えも聞かずに手を取って歩き出した。 「僕はね、昔は本当にどうしようもないやつだった。この世に僕以上のダメな男はいないと思ってたんだ」 「そ、そんなことないでしょう?」 「あはは、ペッシ優しい。いや、本当にダメなんだ。僕は人の言葉を信じられなかった。ずっとダメなやつだ、と家族に言われてボスにも言われていた」 「……」 それはペッシにも覚えがあったことだ。しかし#名前2#はそれが数十年続いていた。ダメなやつだと言う家族を素晴らしいものだと置き換えて彼らのために汚い仕事を続けて見下されつづけた。 「ボスは昔の僕の方が良かっただろうね、人間じゃなかったから」 「……ボスと、対立したんですかい」 「ちょこっとね。ただ結局ボスとの関係は今も変わってないし僕は自分の弱さを実感してるよ、人質が新しくなっただけだもの」 「……」 「ペッシ、君やばいって顔してるけどさ。君も僕の人質なんだぜ?」 「え、ええっ!?」 「恋人の弟分くらい調べるさ、君は僕とよく似ている。でも君の素質だとかそういうのは僕よりも上だ。素晴らしいアッサシーノになれる」 「………」 嫌味にも受け取れそうなその言葉を#名前2#は本心で言っているようだった。 君の弟分、可愛いね。僕も好きなタイプだ、と#名前2#が言う。「ああそうかよ」 「うん。……はは、僕に好かれても困るかな」 「そうだな」 二重の意味で肯定した。げし、と#名前2#の足が飛んでくる。わざと逃げないまま背中に受け取るとすぐに足が引っ込んだ。 「……避けろよ、お綺麗なシャツが汚れる」 「お前に蹴られたくらいで廃るわけじゃねえ」 「ふざけんな、そのシャツの方が何倍も素晴らしいのに」 #名前2#は頭を振ってソファーに寝転んだ。ペッシに会ったよ、と事後報告をする。だろうな、と頷かれた。 「良い奴だろ? お前好みだ」 「君も好きだろ」 「まあな」 #名前2#はプロシュートの告白に泣きながら「バカだろ、君」と叫んだ。 「僕なんかに愛を囁いてどうする……君は、ヒットマンってやつだろう? それぐらいは知ってる。僕に、僕なんかに……」 「お前だからだ。お前が好きだからだ」 「僕みたいな男を好きになっても何も無い。生産性もない。僕は君に何もしてやれない」 「! 俺が、お前に何か求めてるとでも……!!? ふざけんじゃぁねえぞ!! 俺はなぁー、お前にフラれてもお前のことをずっと追いかける覚悟ってものを作ってきたんだよ、ここで死んでもいいくらいにはよぉー」 #名前2#は呆気にとられた顔でこう言った。 「訳分かんねえよ……なんで俺なんかにお前は来るんだ…」 だからプロシュートは言い返してやった。自分のこの恋は誰にも捨てさせないし誰にも壊せやしないのだ、と。#名前2#とはそこで別れたがプロシュートは彼に会いに行った。何十回というバラの花束に告白に褒め言葉に#名前2#はようやくプロシュートの恋人に収まったのだった。