忘れられた宇宙飛行士
!英名推奨 #名前2#は馬鹿な男だった。馬鹿だったのでリドルが面倒を見ないとすぐに怪我をするし病気になるし大人達に目をつけられる存在だった。馬鹿だったので#名前2#はリドルに嫌われていることも知らなかった。リドルが突き放しても、何かの力で吹き飛ばしたり怪我をさせてもへらへらとしながら近づいてきた。 「オレ、トムといないとダメなんだよー」 彼の口癖は聞いてて耳障りだった。自分で頑張ろうとかいう努力のない#名前2#・#名前1#が嫌いだった。何が起きても笑っている#名前2#が憎かった。一度、死ねばいいと言ったことがある。奴はそれでも笑って「それはダメなんだよぉ」と言うのだった。何がダメなのかリドルには分からなかった。 #名前2#とリドルは問題児がセットになったようだ、と言われたことがある。あいつとセットなんてと思ったが#名前2#はいつもリドルにくっついてくるので何も言えなかった。 「リドルはさ、愛してるって言ったことあるか?」 #名前2#が突然にそういった時も馬鹿馬鹿しくて返事を考えるのも面倒だった。あるよ、と言ったのはただの見栄だったが。#名前2#は少しリドルを見つめたあと「マジで?」と聞き返して「そっかあ」と勝手に頷いた。 「でもさ、リドルは、愛を知らないよな」 ぽつり、と付け足したような言葉だった。だが聞き捨てならない言葉だった。#名前2#を突き飛ばし馬乗りになった。真白くて細くていろんな大人に絞められたであろう首をリドルの手が襲った。ぎりぎりと締めつける。本当に死ねばいいと思ったわけじゃない。だが勝手に決めつけられたことと#名前2#の優越感に満ちた言葉に腹が立った。それだけのことだった。 「僕には……! 僕には、愛なんて! いらない!」 本当にそれだけのことだったのだ。すぐに孤児院の職員に見つかりリドルと#名前2#は引き離された。#名前2#はリドルから離れると思ったがそれからもずっと一緒にいた。#名前2#のことはよく分からなくなった、 #名前2#とリドルのもとに手紙がきた。リドルにはホグワーツ魔法学校から、#名前2#にはダームストラングからだった。ようやくこの男とおさらばできると思ったら清々した。あまりにも爽やかすぎて自分の胸はスカスカしたように何かが足りなかった。#名前2#の笑い声がこんなところまで染み付いている、と嫌になった。大きくなったら心を取り除く魔法を作ろう。こんなの、真平だった。#名前2#は苦笑いをしながら「頑張れなぁーリドル」と声をかけてきた。上から言われたように思えてひどく腹が立った。肩に置かれた手を振り払い、「君とはなれるのがこんなにも遅くなるなんてね」と嫌味を言ってやった。どうせ伝わないだろうけど、と思ったが言ってやらなければ気がすまなかった。#名前2#は笑いながら「ごめんごめん、もう大丈夫だ」と言う。何が大丈夫なのか、#名前2#はどうせ適当に言っているのだろうと思った。 #名前2#と別れてホグワーツに行った。周りの人間は#名前2#よりも低脳な奴らばかりで逆にこちらが驚いた。これならダームストラングに行った#名前2#も平気にやっているだろうと思った。そこまで考えてからふと、「#名前2#のことを心配しているのか?」と自分に問いかけてしまった。#名前2#がどうしていようと関係ないはずなのに、なぜ気にかけているのだろう。リドルの問いかけにリドルは何も答えられなかった。 夏休みのみ孤児院に帰ってきた。#名前2#は孤児院にいるマグルたちと話していたがリドルは1人で過ごしていた。ちょこちょこと#名前2#が近寄ってきたが他のマグルに引っ張られてすぐにどこかへ消えた。#名前2#が近くにいるのに隣にいないというのは今までなかった話だ。スカスカした胸に風がぴゅうっと吹いた。変な気分になって、夜中に#名前2#の教科書を全てボロボロにしようと思った。ただの嫌がらせだったが、マグルたちがやったように見せかけようとリドルは真面目にひどいことを考えていた。そっとトランクの中を開けると、ひどい汚臭がした。人の糞便の臭いだった。鼻をつまみすぐにトランクから離れる。ダームストラングとホグワーツのレベルが同じかどうかなどは知らない。ただ、#名前2#が虐めを受けていると知った時リドルの中で何かが吹っ切れた。 ホグワーツとダームストラングは特に関係があるわけでもない。何とか交換留学生的な制度を作らせようと考えていた年、リドルのもとに知らせが入った。#名前2#が危篤だ、という知らせだった。 ホグワーツにはリドルが優等生であったことと、家族の危篤ということで孤児院に急いで帰らせてもらった。#名前2#は青白い顔でベッドにいた。息が荒くもう体は動かせないようだった。呼吸器のようなコンブが口にへばりつき、カテーテルと点滴の管が何本も#名前2#の体から伸びていた。院長がそっと耳打ちをしてくる。人が近くに寄るのは嫌なはずなのに、ショックで体は動かなかった。 「イエスかノーで答えるようにさせて。喋ろうとして呼吸器を外そうとするの」 コンブは呼吸器に見えるように魔法がかかっているらしい。分かりました、と頷いておそるおそる#名前2#に近づいた。ごほっと#名前2#の口から真っ赤な瘡蓋が出てくる。喉にどれほどの傷があるのだろう。瘡蓋はコンブにたまり続けていた。 「やぁ、リドル……」 コンブを外して#名前2#が笑いかけた。急いでつけ直させようとすると、#名前2#は「しゃべりにくい」と呂律の回らない口で話した。喋らなくていい、聞いてくれればいい。そう言いたいのに涙が出てきて言えなかった。 「#名前2#……! 死ぬな!!」 「……」 「お願いだから! 僕を置いてかないでくれ!」 「……リドル、お前…愛…が、いらない…て、ゆって、」 「……。すまなかった、あれは、ただ、悔しくて…!」 「オレ、の、ため……の、なみ、だは。愛、だろう?」 「ッ……!」 「ほこれ、リドル……。お前は、人を、愛し、た、ん……だ」 「#名前2#……? おい、#名前2#! なあ、おい! #名前2#!!」 見開かれた目がリドルを見つめたまま固定された。彼が死んでしまう。リドルの頭の中に閃いたのは魂を物に固定するという、学校でずっと温めていた理論だった。 「死にたくないと、頷け、#名前2#!」 もうほとんど死にそうな#名前2#をこの世に縛り付ける。それがどれほどまでに残酷なことかリドルは分かっていなかった。 #名前2#がずっと持っていた琥珀のペンダントを掴み魔法をかける。#名前2#はもうリドルを見ていなかった。愛を貰ってばかりのリドルは愛を返すことを知らなかった。 琥珀に縛られた魂をもとにゴーストになった#名前2#は後にこう語った。 「闇の帝王なんて、ただのコンプレックス野郎だ」 家族への愛情が歪んだリドルと更生の手伝いをしてた主人公のはずが……あれえ?