合理性の追求「ジグザグの」「沈黙する」「背伸び」
!ふわふわ世界軸 !恋人主 響輔くんがチョコレートがほしい、と言った時じわじわと頬が赤くなるのが分かった。すごく恋人っぽいと思った。付き合って初めてのバレンタインである。芸能界で引っ張りだこの彼と会社員の俺とで付き合えるなんて夢みたいな話だが、実際にあることだからちゃんとやらなければ。失敗は許されない。というより、俺が失敗したくない。 「……用意しておくね」 精一杯の言葉に響輔くんはうん、とはにかむように笑った。可愛い。思わず俺が握った手を見て響輔くんはまた笑った。 とはいっても、男の人にそのまま可愛らしいものを送るのはどうかという先入観と固定観念があり、お店に来たはいいもののものすごく迷うことになった。ジグザグの道のりをふらふらと歩いては頭を抱える。あれ美味しそう、でも響輔くん好きかなあ? うーーんあれは可愛らしくてなんかイメージと違う? 高そうなチョコレートはおいしいと聞いているけれど、響輔くんはいいところのお坊ちゃんだからなあ。 フラフラと歩いていた俺の背中をぽん、と誰かが叩いてきた。 「よお、#名前1#」 「うわ、ビックリした。え、御園? 久々〜〜。同窓会以来だっけ」 「久々だな〜〜。なに、彼女にチョコレートおくんの?」 「……うん、まあそんな感じ」 「彼女さん甘いもの好きなの?」 「彼女じゃなくて、彼氏なんだ」 「……」 「……」 沈黙した御園に失敗したかな、と思った。自分で選べるよ、と振り返ったのに御園はポカンとした顔のままだった。 「……そっかあ、彼氏か」 「うん」 「ちゃんと告っときゃよかったなあ」 「は?」 「ううん、なんでもない。恋人さん、甘いもの好き?」 「……好きな方だと思う。疲れてること多いし、糖分あげたいんだよね」 「実用的なこと考えてんね〜〜」 その後、御園とチョコレートを試食しながらお店の間を歩いていき最後は結構可愛いデザインのものを購入することになった。 バレンタイン当日になって準備していたチョコレートを見せたら響輔くんはぶすっと不貞腐れた顔をしていた。 「……えーっと、響輔くん?」 「このチョコレート、男と選んでた」 「えっっ!? あ、うん……。そうだね、高校生の時の友達に……」 「……あいつ、#名前2#のこと好きだったでしょ」 「は? いや、それはないって……。御園、クラスの中に恋人いたし」 「本当に好きだったのかは分かんないけど。でも、視線見れば分かるよ。あの人は#名前2#のこと好きだった。あいつの未練がいっぱいあると思う」 「………せっかく背伸びして高そうなものを買ってみたけど、ダメですか」 響輔くんはごめんね、と謝った。本当に嬉しいけどモヤモヤしてるから、と。 「……じゃあ、また今度ちゃんと一人で買ってくるから。ひとまず、このパイの実とかでいかがでしょうか」 いつもコンビニで買ってるようなものなのだが、響輔くんはぱっと受け取ってすぐに食べ始めた。おいしいよ、これも。それは分かるけどやっぱりかっこいいものをあげたかったんですよ。心の中で呟いて、響輔くんが食べたがらなそうなチョコレートは同僚にあげようかなと思った。