漆黒の追跡者

 米花の森に行くらしい世祖のために鞄の用意をしていた。虫よけスプレーや飲み物とタオルなどをつめこみ背負わせる。帽子と虫かごも欲しいと言われて物置になってしまっている部屋からカゴを持ってきた。  博士の車で行くそうなので今回は俺もお休み。沖野さんに気になることがある、と依頼された仕事をこなすつもりだ。うまくいけばバイト代を稼げるので張り切ってやるつもりだった。 「世祖ちゃんすごーい!」 「よく登れるな、お前……」 「#名前2# おしえた」 「#名前2#さんらしいねー」  コナンがクワガタをとるのにするすると木の上に登ったのを見て世祖も荷物を置いて登った。コナンよりも高い枝を目指し、そこにどでんと座る。木の葉がパラパラと下に落ちた。 「#名前2#くんも木登りは上手そうじゃのう」 「うん! じょぉーず!」 「#名前2#さんも来たらよかったのにね」 「バイト、ある」 「バイトじゃ仕方ないわよ。ほら、世祖。危ないから下りてきなさい」  哀の言葉にうなずき、ぴょんと別の木に飛び移った。枝から枝へと移りながら段々と下に下りてくる。サーカスみたい、と歩美の声が聞こえた。にこっと笑って最後は一回転して下りてくる。  着地したところで大きな拍手をもらった。へへん、と自慢げに胸を張る世祖の横にコナンも下りてくる。 「あぶねえなあ、全く」 「あれも#名前2#さんに教えてもらったの?」 「うん!」  賞賛の声を浴びていた世祖の前をカブトムシが飛んでいく。追いかけていくと樹液のたまったところにカブトムシたちが集まっていた。オスとメスが一匹ずつ。でも、メスの方には何かシールがくっついていた。 「何か前羽についてるね」 「……とる?」 「ですね! 可哀想ですし!」  光彦が器用にテープを取る。何のテープか分からないが二つくっつけてVの字にしていた。白い背景に赤い字でOPENという文字が間隔を開けて書かれている。 「コンビニ弁当などについているテープじゃな。昨日買ったからあげ弁当にも……」 「からあげ?」 「あぁっ」 「またこっそりメタボってるのね?」 「ドクターめっ!」  世祖にまで叱られて博士は苦笑いだった。光彦たちはカブトムシの方が気になるのかオスの方を捕まえると「恋人同士かもしれませんね」とロマンチックなことを言った。 「じゃあ歩美が名前、つけてあげる。えーっと…男の子は彦星で女の子は織姫!」 「いいですね~」 「そういえば、もうじき七夕ね」 「せい、竹くる」 「竹持ってきてもらうの?」 「うん」 「いいなー、歩美も竹に短冊飾りたい!」 「博士の家でやれないかまた今度考えましょう」 「七夕と言えば…お待ちかねのクイズの時間じゃ」  コナンと元太もやってきてクイズを聞き始めた。ある年の七夕の日、大雨で会えなかった織姫と彦星が恋人と共に過ごす日、略して恋共の日を勝手に決めて会うことにした。さて、それはいつの日のことだろうか。 「一番、一月一日の元日。二番、二月二日ごろの節分。三番、三月三日の桃の節句。四番、五月五日の端午の節句」  世祖にとってはあまり経験のないだじゃれのクイズだった。コナンたちはもう分かってるらしい。歩美は桃の節句、光彦は端午の節句、元太は元旦だと言うので世祖は余った節分と答えた。 「色んなことを考えるなあ」 「博士、正解は?」 「四番の五月五日じゃ」 「やった!」 「じゃが、わしと考え方が少し違うの」 「五月五日は子供の日。子供の日を分解すると子イ共の日。恋、共の日だろ?」  すごい無理矢理がすぎる問題だった。正解は分からなかったがまあ気にするほどでもない。そうだ、別に七夕とかいうお話よりも星を見る方が楽しいし。 「世祖? なんだよ、家に帰ってくるなり」 「うぅ~~」  家に帰って#名前2#のお腹にしがみついた。分からない問題に久々にあたったので心が今、大変なことになっている。  ニュースで広域連続殺人が起きている、と話題になっている。米花だけならまだしも、はるかに広い地域で起きているので大騒ぎなのだ。今は一昨日の小田原のインターでの事件での麻雀パイが東京、神奈川、静岡、長野と各所で起きていたらしい。見事にコナンと知り合いの刑事さんたちが集まってるなあと#名前2#が言っていた。  事件性はあるもののコナンたちが何かやるんじゃないかなあと座っていたら突然スマホに電話がかかってきた。はいはい、と#名前2#がソファーから立ち上がりスピーカーホンで取った。 「世祖も聞いてるかい?」 「あ、はい今持っていきます」  スマホがテーブルの上に置かれた。世祖はname2#の膝上に座らされる。どこかに移動したりしないようにお腹をしっかりつかまれた。 「大丈夫です」 「今回の連続殺人事件で組織が動き出す」 「……本気ですか」 「長野で殺害された男が組織のノックリストを所持していたんだ。おそらく組織もそれを回収しにくるだろうからね」 「それを世祖がデータを入れ替えればいいんですか?」 「そりゃあ力を使えたら楽なんだけど組織は別路線で動くみたいでね。ということで、君は組織とあの少年探偵を両方サポートしてくれ」 「両方、ですか」 「そう。組織のノックリストも大事だしあの少年探偵が死ぬのも困る」 「彼、主人公ですしね」 「毛利も彼を気に入ってるからね」  キノの口から毛利の名前が出るなんて。世祖と同じことを思ったのか#名前2#も「ひぇぇ」と声を漏らしている。キノは何も言わずに電話を切ってしまった。