赤と黒のクラッシュ
楠田陸道が自殺してしまったので水無怜奈を移動させなければ、という結論に落ち着いたらしい。組織への連絡が途絶え、死んだという報道がテレビに出る前に行動しなければならない。 宗三と話すことがあったため赤井さんたちとは時間をずらして病院に帰ってきた。#名前2#は宗三を通じて沖野に組織が世祖に手を伸ばし始めていることを伝えた。 「つまり、ネームドがもしかしたら水無怜奈と共にスプリッツァーの正体を暴こうとしている、と」 「……そうです」 「そしてそれは誰かわからず、もしかしたらバックにボスがいるかもしれない、と」 「……そうです」 「かなり危険じゃないですか」 「おっしゃる通り」 「沖野になんて言われるか…」 「多分殺される」 冗談ならよかったが、#名前2#と沖野の間では本気になりえた。楠田が自殺した状況を聞いた宗三はひとまず#名前2#をぽかりと殴りつけた。お前がついていながら何をしているんだ、という手だった。#名前2#は何も言えずただ下を見つめていた。 「……はあ。困ったことになりましたね」 「そうなんす」 「組織のことはこちらで何とかします。なので、君たちは精一杯生きなさい」 「宗三、でも…これは俺のミスだ」 「それは沖野からの仕事でしょう。貴方がいちばん優先すべきは世祖を守ることです。世祖を孤独にさせたらどうなるか、分からないわけではないでしょう」 これも兄の役目ですよ、と宗三が#名前2#を抱きしめた。頭を撫でられてお疲れ様ですと労わってくれる。涙が出そうなのを必死にこらえた。 病室に行く途中で赤井が屋上に行く階段をのぼっていくのを見た。んん?と思ったら世祖が「せい あっち!」とついて行ってしまい#名前2#は仕方なく1人で病室にいった。 「彼は組織の中でうまく立ち回り、ライというコードネームをもらった。そして、ジンとスプリッツァーという人間との任務についたのだ」 病室の扉を開けた途端に聞こえてきた赤井捜査官の話に#名前2#はやべえ、変なところに入ってきちまったと後悔した。ゆっくりと扉を閉めてうずくまるようにそこに座り込んだ。ここでも話は聞こえていた。 「ねえ、そのスプリッツァーって、」 「ああ。君も知ってる通り#名前1##名前2#君だということが判明した。まさかシグマが自分の息子を潜入させているとは想定外だったよ」 「シグマって、確か#名前2#さんのお父さんだよね?」 「血の繋がってない義理の父親よ。だからこそあんな非道なことが出来るのかもね。シュウが潜入してたとき既にシグマはFBIの指揮を取っていたけど息子の話なんか1度もしたこと無かったわよ。スプリッツァーも敵として作戦を進めてたし」 「彼はノックとは言い難いが、彼もまた組織による被害者の一人というわけだ」 「……」 「本当は#名前2#君も証人保護プログラムを受けて欲しいけど世祖ちゃんのこともあるじゃない? サヴァン症候群の子は扱いも難しいし隠すには不向き。結局、あのまま守る方がいいっていう結論なのよ」 「こ、こんにちはー」 そろそろ話が脱線しそうだ、と判断して病室に入った。 俺が知ってる事は、と前置きを置いてから#名前2#は話をし始めた。赤井と宮野明美の関係。そして世祖の組織での話。#名前2#には世祖がスプリッツァーであることを言ったつもりはなかったが周りからすればかなりボスに近しい幹部であったことはすぐに分かった。 「なら、シグマもあなたも世祖ちゃんも組織側ではないということね」 「俺達は俺達でやりたいことしますから。まあコナンたちの手助けはしますけど。組織の壊滅とかは周りが言ってるだけなんで俺はどうも。実際俺が関わりあるわけじゃないんで、実感わかないで終わってますから」 名探偵コナンという世界では黒の組織との対決がメインテーマであろうと沖野が見当をつけて組織の壊滅が早まればこの時間ループも終わるだろうという結論にいたっているがこうやって手を出してこないということは君子危うきに近寄らずを貫いているということ。さすがにそれは説明出来ないので#名前2#は適当にごまかしたが。 コナンはその中でこっそりと部屋を出てきた。FBIはこれから水無怜奈をどうやって移動させるか考え始めるだろう。それを逆手に取って、コナンはとある作戦を考え出していた。とはいってもそのヒントをくれたのは世祖であったが。 ガチャリと屋上のドアを開けると手すりのところで世祖と赤井が月を見ながら何か話していた。風に乗って少しだけ話が聞こえてくる。赤井は優しい表情を浮かべ、世祖の方は顔をむっと膨らませていた。 「! コナン」 「ああ、ボウヤか……。組織を迎え撃つ作戦はまだ出来ていないぞ」 「迎え撃つものは、でしょ?」 ほおぅ、と赤井の口が動く。世祖はもう話は終わりだとでも言うようにへたりこんでしまった。赤井が差し出した手はふんっ!と息をたてて無視する。 「嫌われてしまったかな」 「……。や!」 「世祖、何やってんだよ……」 コナンが手を貸して立たせようとするとタイミングよく#名前2#が扉から顔を出した。パアッと世祖の表情が変わるがまたすぐに頬を脹らませて不機嫌な様子になった。まるで犬のようだとコナンは思ったが犬よりもタチの悪いものが世祖である。 「ああ? 世祖、お前また駄々こねてるのかよ」 「そのようだな」 「すんません、赤井さん。変なこと言われたでしょ、気にしないでくださいね。戯れ言とでも思ってください」 世祖の片腕を掴むと#名前2#は簡単に立ち上がらせた。いつものように抱っこはしないらしい。赤井は#名前1#は世祖を甘やかしすぎだと思っていたのでそうやって無理にでも立たせるというのは意外だった。コナンにはもう見覚えのありすぎることなので気にしない。世祖はぐいぐいと引っ張られてようやく立つ気になった。 「赤井。コナン。あれ、やる?」 立ってすぐに笑うように言った。世祖の言葉に赤井とコナンは顔を見合わせてまるで共犯者のようににんまり笑う。 「ああ、勿論だ」 「今からその準備をしに行くよ」 「?? 何の話、」 してるんだ、という前に世祖が屈んでいた#名前2#の胸板にゴツリと肘を強く当てて力ずくで黙らせる。可哀想、とさすがの赤井も思った。迎えに来たのにまさか肘鉄を食らわされるとは。 世祖はごそごそとポッケを探ると紅いにシールを差し出した。 「これは?」 「コーティング。残せ…ないでしょ?」 「……。やはり君が、この作戦を噛み合せたのか」 「やる はぁ コナン。 せい #名前2#と、いる」 「おお、一緒にいるのはいいからとりあえず話を聞かせてくれ」 涙目のままに世祖の首根っこをつかみガクガクと揺らす#名前2#は相当痛かったらしく胸板をずっとさすっていた。 「あのね、#名前2#さん。黒の組織に水無怜奈を戻そうと思うんだ」 「ほお」 「戻し方は適当に考えるが、まあ普通に奪われた形式にすればいいだろう。水無怜奈が組織に戻ればおそらく俺を殺しに来るだろう。そこを逆手にとる」 「自殺した楠田陸道と赤井さんを入れ替えるんだ。勿論、ちゃんと赤井さんと把握出来るようにしてね」 「それで指紋か。コナンのケータイには楠田陸道の指紋がべったりと残ってるから」 「そーゆーこと。世祖が出したシールはそれ用ってことになるけど……。なんで持ってんだ?」 コナンの問いかけに世祖はん?と首をかしげて「必需品」とだけ答えた。そんなの誰も持たないだろう、とツッコミする人間はおらず。へー、と#名前2#は1人だけ関心していた。 「どうやらお嬢さんはボウヤが組織の容疑者に会う前からこの作戦を考えていたらしいな。容疑者に会う順番をわざわざボウヤに指定したのはお嬢さんだと言うじゃないか」 「楠田陸道の指紋が残るように、そこからやってたってことか」 「ああ。それで、今から水無怜奈のところに行くんだけど#名前2#さんたちも来て欲しい」 「ええ、なんで……」 「世祖に言う事きかせられるの、#名前2#さんだけだろ。それに、未来を簡単に予測できるってのは世祖しかいないんだよ」 ふぅ、と#名前2#はため息をついた。まさかこんな事になるとは。長い戦いになりそうだ。そして眠い。仮眠など取らないままで働かせた頭はもういいやという投げやりな結論を出して「わかった」と答えるのだった。