警察学校組と
見せたのはパソコンに映し出した結婚式の広告だ。 「結婚式、幽霊になってからですが挙げてみませんか」 「そんなこと、出来るんですか?」 「まあ要相談になってしまうんですけど。多分、人そんなに呼べないし花嫁姿でいられるのもほんの少しの時間だし、制約がたっぷり出来てしまうんですけど」 「でも、やれるんだろ?」 伊達の言葉に#名前2#と世祖が揃って頷いた。ならやろうぜと伊達の顔が破顔する。 「い、いいんですか? もっと考えて返事した方が……」 「何かやりたいことあるんだろう?」 下心まで見抜かれていたらしい。#名前2#は顔を赤くさせて黙り込んだ。ぽん、と頭に手が置かれるがぬぷりとすり抜けるように沈みこんだ。 「おっと、撫でられないんだったな」 「……これはただのワガママなんですけどね」 世祖の頭を撫でて#名前2#は結婚式を見せたいんですと笑った。それもとびっきり素敵な人達の結婚式です。俺は結局見せられないだろうし、周りもそうなると思うんで。世祖は親戚もいないし、障害者ってこと考えると結婚式自体もいつも遠慮させられてしまって。 「だから世祖本位な結婚式になってしまうんです。制約っていうのはそういうことで」 「そうなの…」 今回の結婚式はそれだけの意味ではなくほかの意味を持つのだが、やりたい理由を素直に伝えた。ダメだと言われたらそれまでだ。それでも世祖については伝えておかなければならない。結婚式を挙げるには彼女が必要不可欠だからだ。 「いいんじゃないか」 「伊達さん……」 「またよく考えろってか? ちゃんと考えてるよ。なー?」 警察学校の同期たちに同意は得られなかったがナタリーさんの笑顔は生まれた。彼、ああ言ったら他のこと聞いてくれないんですよと笑って「お願いします」と頭を下げてくれた。 「! こちらこそよろしくお願いします!」 「なんか、あの光景さ……#名前2#くんが付き合うの承諾してもらったみたい」 「おま、そういう水差すようなこと言うなよな……」 「あ、ごめん」 その日はこれでもう寝ることにした。幽霊さんたちはリビングで好きにしてもらうことにして、刀剣男士たちはゲストルームに。その日は世祖が久々に俺の布団に潜ってきた。いつも俺の匂いを感じる何かを持って寝てるが今日は俺そのものにくっついてきた。足を絡めてその暖かい体を腕の中にしまい込んだ。年齢の遅くにできた子どもは男親は可愛がると誰かが言っていた。本当にそうなのかは知らないけれど、昔よりは可愛がることも上手くなった気がする。その日の夢は何か悲しい夢を見たのか起きると俺は涙を流した跡があった。 「おはようございます」 朝から挨拶をして幽霊たちも「はよう」と返す。今日は彼らを縛らないよう世祖に言い聞かせていたし夜中に出ていった感触もしなかったので動いてたんだろうが朝になるとぼんやりと浮遊しているのだった。 キッチンに立ち料理を始める。そのうち刀剣男士も起き始めた。加州は手伝ってくれるが獅子王と安定は別に用事があるので朝からスマホとパソコンとに格闘している。諸伏さんはそんな2人が気になるのか後ろからちょこちょこと見ていた。まるで好奇心の強い子どものように見えた。 朝7時に世祖が起きてくる。愛用のこんのすけ人形を噛んでずるずると中に入ってきた。ナタリーさんが声をかける。 「世祖ちゃん、おはよう」 突然の声に目がぱっちり開く。覚えのない声を突然聞いてビックリしたのだろう。覚醒した頭にだんだんと記憶が蘇り、世祖はこっくりと頷いた。こんのすけはそのままにテーブルに着く。今日のご飯は昨日の残りものを温めたのとご飯、味噌汁である。 「手抜きだなあ」 「松田さん、いつも惣菜買ってたくせに」 「あー、そりゃ生前の話だろ」 こっちだってアンタと同じ生きてる条件ですよという言葉は白米と一緒にのみ飲んだ。今日は幽霊たちは置いて学校である。世祖を学校に送り届け一限の教室に加州と共に滑り込んだ。 「今日は遅かったのう」 「ちょっとお客たちが心配で……」 幽霊とは言えないので客と言い換えたら「ああ」と頷いてくれた。どうだったんか、結婚式はと聞かれてOKサインを見せる。 「とりあえずそこまではOKだったからー、あとは家で拘束されることに慣れてもらわないとね」 「そうなんだよなー」 その日の授業は基本的に話を聞いてコメントペーパーを出すタイプだった。今日はバイトも入れてないので世祖を迎えに行き、家に帰って幽霊たちとはなしをすすめなければと思っていたのだが……。 「あ、#名前2#くんですか?」 「梓さん。こんにちは」 「突然にごめんなさい、ちょっと安室さんが突然欠勤っぽくて……。休み明けなんだけど予約の人達がッ…!」 「はーい、ヘルプの方確認しまーす」 安室さんが連絡無しに突然欠勤することは少なくない。前にその愚痴を聞いて「じゃあ手伝える人紹介しましょうか」と安請け合いしたのが始まりだ。基本的には大学生の年齢のメンバーで回している。一応、安定と歌仙が定期で入っているがこの2人も他のことに忙しい時はヘルプはこちらに回ってくる。俺の方はアルバイトとしてやってはいないのでボランティアという形だが確定申告の時に困るので履歴書などで個人情報は提出している。安室さんのいないシフトなので顔をあわせなくて楽なのだが他のバイトもあるので大変だ。 「今日は仕方ないから……えーっと誰の手が空いてるんだ?」 「長谷部は?」 「あいつ行くとうるさいからダメ。学校側に迷惑かかる」 「和泉守がおる」 「遠くないか、あいつ……」 「あー、御手杵は? あいつ今東京にいるんでしょ?」 「ナイス、加州!」 早速御手杵に連絡すると二つ返事でOKの声が聞こえた。幽霊たちのことも了承して結婚式のプランニングをしてくれるらしい。よしよし、あとは夢の中に安室さんを招待するだけだ。それについては世祖とAIであるノアズアークに力を借りてやることは決めている。刀剣男士たちも夢に招待して、えーとブーケトスなどは出来ないから誓いの言葉とキス、指輪交換、あとは死んだ彼らが降谷零になにか伝えられる時間を作ってやらなければ。 ノートに箇条書きで書き始めると思っていたよりも準備がかかりそうだ。一人でやったらきっと勝手に思い詰めて自滅するだろう未来が見えた。スマホを取り出しグループを開いた。ノートの写真を撮り送信する。 「助けて欲しい。お世話になった人達のために何かしてやりたいんだ」とメッセージを送った。 すぐに返信がある者もいれば数時間してから返事が来た者もいた。ポアロから出てスマホを確認していると「歩きスマホは感心しないな」と後ろから声をかけられた。後ろを見るとこの前夜にお会いした田上さんだった。 「田上さんだ、こんにちは。お仕事は終わりですか」 「た…ああ、そうなんだ」 田上は偽名だと何となく直感で感じたがアタリだった。後で沖野さんから安室さんの部下、風見裕也だと聞かされた。かとみが名前に入っている偽名だったとは、なかなかに本名に近い偽名である。 「……君は、きっと私のことは既に知ってるんだろう?」 「何の話ですか」 「しらばっくれなくていい。君についてダメなら、と別方向から情報を探っただけだ。沖野という男の息子らしいな」 なるほど戸籍の方から来たわけか。学校にはちゃんと住民票差し出しているのでそちらから調べるのは公安では簡単だったろう。 「沖野さんに何か言われました?」 「……。君に手を出すな、と」 あ、これはまた嘘をつかれているなと感じた。あの沖野が#名前2#だけを指すはずがない。きっと世祖のみか世祖と#名前2#である。 「風見さん」 #名前2#はもういいかと彼の名前を呼んだ。風見の方も少し驚いた顔をして「何だい」と聞く。 「ちょっと貴方の上司に会うことがあったらこれを渡して欲しいんですけど」 「ん?」 「適当に理由をつけてくれていいです。渡すだけでいいです」 「危険なものでは無いのかね」 「これを渡したあとだったら俺はある秘密を話します」 それは沖野に関するものか?と聞いてみるとまあそうですねと返事が来た。興味はあったがそれでも手渡されたこれを降谷さんに渡していいものかも気になる。 「これを、1度私が調べてみても?」 「どうぞ」 手の上に置かれたフェルト製のストラップを見ながら調べたところでと思う自分がいた。 飲食店のバイト経験がないので色々と間違っていたらすみません…。