ゼロの執行人
博士の家に、新しい発明があるよと呼ばれてきたものの。なぜか一緒に毛利藤四郎も来てしまった。というより、電話の声を聞いて「ふぎゃあ!! 可愛い子らの声が聞こえました!!」と駄々をこねたのである。めんどくさくなって世祖の友達として連れてきたら、小学校一年生の皆を見てでれでれとしはじめた。 「ねえ、あの輝って子……あの子も、何かあだ名があるの?」 「あるよ。毛利っていう」 「へー」 コナンはもはや刀剣のあだ名があることに慣れてしまって、聞くだけ聞いてテレビに戻ってしまった。世祖もドローンには興味が薄いらしく(本丸にいたときの方が面白いものをたくさん見てたからだろうか。)俺の背中によじのぼり襟を噛んでくる。外そうにも外れない。 「#名前2#さんが蘭姉ちゃんのことなんで名前で呼ぶのかなって思ってたけど。毛利ってあだ名が先にあったの?」 「正解。毛利探偵はお世話になってるから先生的な意味でつけてるけど」 毛利藤四郎は一年生たちと遊べるのが楽しいのかいつも以上にいい笑顔でしゃべっていた。テレビにはっ小惑星探査機「はくちょう」の話が出ている。昔からこういう話には弱いものでついついソファーに吸い寄せられた。世祖を背中から前に持ってきて膝上にのせる。テレビに興味はないのか俺の首にずっと世祖がのしかかっていた。 「この探査機ってすごいよなあ。無人でもなんとかできるように考えられてるらしいし」 「GPS誘導するんだもんね」 「GPSを考えた人は偉大だなあ」 のほほんとして見ていたが緊急ニュースでその空気もぬぐわれた。エッジオブオーシャンの爆発事故があったらしい。博士!!とコナンが慌てた声を出す。俺はそれを見なあらのほほんとしていた。 「怖いなあ、哀」 「怖いなあって、あなたねえ!?」 「テロじゃないよ」 「え?」 「テロリストについては俺もいろいろと言われててね。大丈夫、これはテロじゃないよ」 小さな少女を抱えたまま大学生が言う言葉である。信憑性もなかったが哀にはなぜか嘘をつかれているとかごまかされているとかいう感覚はなかった。 「#名前2#さんは、そう言い切れるの?」 「もちろん」 コナンにも#名前2#は笑いかける。 「でもまあ、それは国際的な話かな。個人での、今の日本の話だと考えると、もしかしたら、もありうる」 「それって、やっぱりまずいんじゃ…!」 「まずいっていうか、俺たちがまだ対処できるレベルって感じかなあ。もっとヤバそうなのは沖野さんに言われるんだ」 沖野という言葉を出されるとコナンたちは止まる。それにサミットはまだ始まっていない。誰か人質にしているとも考えられないだろう?と言うとコナンはようやく落ち着いたみたいだった。 「博士―! 画面が消えちゃいましたー!」 「おおー、今行く!」 博士がまた庭に行ってしまう。世祖は首にかじりついたまま動かない。あのカメラの中に一瞬だけうつったのは本当に安室さんだったのだろうか。世祖に聞いてみたかったが世祖はテレビを見てはくれなかった。 家に帰ると毛利は満足げな顔をして「ありがとうございました!!」とキラキラした顔で帰っていった。今度はソハヤさんときますね!と言っていたがそんなに頻繁に来る予定でも作るのだろうか。 「#名前2#、ごはん」 「あー、はいはい」 世祖にご飯を食べさせている間、サミットについての情報を調べてみたがうまくいかない。何か規制でもかかってるのだろうか。 「世祖ー、お前ならこれでき…」 最後まで言えなかった。世祖は白い服にべったりとケチャップをつけてオムライスと格闘していた。 「ま、まて、世祖。ストップ。ストップ!!」 そのまま世祖を助けていたら調べるのも面倒になってしまった。 翌朝。世祖はむっくりと起き上がると俺の肩をべしべしと叩いた。まだ朝早いのに服を着替えさせられて車のキーまで渡された。 「んむ。いーく! いーっく!!」 「行くってどこへ……」 世祖はびしっと毛利探偵からもらった金ぴか名刺を取り出した。 「……毛利探偵に、何かあるのか」 慌てて着いたが中にはやっぱり入れさせてもらえなかった。世祖がよじ登ってみた先には段ボール箱がたくさんあったらしい。押収されるファイルたちを見て毛利探偵って意外とマメなところあるよなあと感心してしまう。毛利探偵のことだから絶対に疑われることはないと思うのだけれど。 「……仕方ない、今日の朝飯はここにするか」 「う」 世祖とポアロの中に入ったら思った通り安室さんはいなかった。ここでいたら絶対に嫌味を言ってしまう気がする。世祖はナポリタン、俺は今日はサンドイッチだけにした。 「なんか、毛利さんのところに警察の人が行きましたけど……。大丈夫だったんでしょうか」 「なんですかね……。俺も何があったのかよくわからなくて」 梓さんと二人で困ったような顔をしていたら世祖が目をぐるぐるっと回したかと思ったらスマホを取り出してタップを繰り返した。梓さんには背中を向けているからまだしも、正面にいる俺にはちょっと怖いかった。