裏切りの真相
世祖ちゃんに昨日の事件は大丈夫だった?と聞いてみる。がきんちょにも聞いたけど、安室さんたちがどうしてたかまでは聞けなかったから。勝手な意見だけど、沖矢さんと安室さんはわざと#名前2#さんを対抗するように好きになってるような、普通に好きになってるような。色々あるけど怪しい関係であるのは間違いない。 世祖ちゃんはうーんと考えて「どーが」と呟いた。 「動画? #名前2#さんたちが投稿してる?」 世祖ちゃんがこくんと頷いた。普通に投稿してるのはあのバンドのやつだけだ。学園祭でやったステージの茶番劇は帝丹高校の生徒たちの間で広まっているだけ、のはず。蘭に安室さんに動画見せた?と聞くと首を振った。 「安室のにーちゃんは、蘭ねーちゃんたちがバンドやるって言ったときに鶴丸さんたちから動画について聞いてたと思ったよ?」 「そうだったっけ?」 「#名前2#さんに電話するって言ったときに『どうしてですか?』って聞いてたし」 よく記憶してる。こういうところがなんか子どもっぽくなくて腹が立つ。じゃあ、沖矢さんが世祖ちゃんのいう動画を見たんだろうか。ううん、考えれば考えるほど分からない。人狼ゲームを初体験した時みたいに頭空っぽだ。 とにかく#名前2#さんが来てくれるまでは何も分からないみたいだ。 授業を終わらせてそのままポアロへ直行した。蘭ちゃんたちが昨日のお礼としてポアロでお茶しようと誘ってくれたのだ。コナンを拾うついでに世祖も拾ってくれるということでありがたくお願いした。 カランコロンと音が鳴る。中に入ると梓さんが世祖に「大変だったねえ」とむにむに頬をもんでいた。安室さんは後ろで働いている。というより女子高生に捕まってる? スマイル1つなんて注文初めて聞いた。 「あ#名前2#さん。ご、ごめんなさい。最近、すごい忙しくて」 「世祖のほっぺた気持ちいいでしょ」 「~~! はい~!」 梓さんは一通りもにもにとした後「仕事戻ります!」と宣言をしてお盆を持ってカウンターへ戻った。小さい子のほっぺなんて皆気持ちいいものだが、コナンはあんまり触らせてくれない。それと世祖はちょっとフォルムがコナンより丸っこい。ボールみたいというと怒られるが、可愛い顔をしてるんじゃないだろうか。 「#名前2#さん、昨日の事件お疲れ様です。昨日行けなくてごめんなさい!」 「大丈夫だよー、安室さんが推理してくれたから」 安室さんのいるカウンターを後ろにしてるから#名前2#さんには見えないだろうけど、対面からはよく見える。安室さん、ニヤけそうになってる。やっぱり本当に好きなのかなあ。んー、でもすごく微妙な感じもする。映画でよく言われるブロマンスっていうのもある。世祖ちゃんは我関せずという顔で#名前2#さんの横に座っていた。 本当は四人席だけど壁に設置された席の方にガキンチョを挟んで3人、ぎゅうぎゅうに座ってる。飲み物しか頼んでないのでこの席でもまあまあ大丈夫だ。 「沖矢さんも推理力すごいわよね」 「そういえばそうだったね~」 紙飛行機の事件のことを思い出す。沖矢さんも安室さんと同じくらいイケメンだし、推理力あるし。米花町だとすごい優良物件のお相手だ。そんな2人を惹きつける#名前2#さんって……。 「そうだ。#名前2#さん、今日うちに寄ってきませんか? お父さん、最近世祖ちゃん預かってないから寂しがってて」 「いいの? すっごく有難い」 「おじさま、何だかんだ言って世祖ちゃんのこと大好きよねえ」 「ふふ、そうだよねえ」 頭の中でおじ様が「そんなことねえ」とそっぽ向いている。私らの話聞いたら言いそうだなあ。 「……。うちは今、親がいないからなあ。俺も父親役やれるわけじゃないし、毛利さんに任せっきりになっちまう」 「そう言えば、世祖ちゃんってなんで蘭ん家に預けられるようになったんですか?」 「父親が毛利さんと友達なんだ。アメリカ渡るけど俺達はついていかないって言ってたから」 「なるほどぉ」 「でも俺、色々と用事入ったりするし世祖は学校に送り迎え必要だし。大学遅いから送るのはいいんだけど迎えがなあ」 「それで蘭ん家に陸奥さんたちが来てたりしたんですか」 ずっと一緒に居るけどそういう話は初めて聞いた。#名前2#さんとは中学、高校と同じ学校だけどそういう話は今まで聞いたこともないし、聞こうと思ったことも無い。 「長居するのはお邪魔だろうし、そろそろ出ようか」 「ねえ蘭! 探偵事務所にお邪魔して世祖ちゃんと小五郎のおじさま二人きりにさせてみようよ!」 「んっふ! 何それ、めっちゃ面白そう。頑張れよ、世祖」 世祖ちゃんが#名前2#さんと通話状態にしたスマホを見せてくれた。うわー、最高! 梓さんもそわそわとこっちを見ている。わかるわかる、気になるよねぇ。安室さんは通常運転で仕事してる。弟子って言ってたけど気にしないのかなあ。 とりあえず蘭が世祖ちゃんを連れていくことにして、私が頃合いを見て電話をかけて蘭を外に連れ出す。そして世祖ちゃんと二人っきり。この作戦で行く! #名前2#さんはスマホをスピーカー状態にして真ん中においた。小声で話すようにな、と#名前2#さんに言われてガキンチョも私も頷いた。 がさごそと音がするけど段々とクリアな音になっていく。蘭の声も聞こえてる。#名前2#さんたち、今日は夕飯一緒になるって言ったら新聞紙をいじる音が強くなった。#名前2#さんを見てみると照れたようにクスクス笑ってる。 楽しんだところで私から蘭に電話をかけた。静かに階段を降りてきた蘭はポアロに戻ってきて「お父さんの声聞こえた?」って笑ってる。 「最高だわ。あはは、趣味悪いけどこういうのすごい嬉しい」 「……。お父さん、#名前2#さんたちのこと息子みたいに思ってるんじゃないかな。勿論、コナンくんも世祖ちゃんもだけど」 「……そうだと嬉しいね。俺は父親には嫌われてるから」 しんみりとした空気になってしまったけどガタン!と電話から音がした。すぐにそっちに目が向いてしまう。 『蘭のやつおせえなぁ。…まさか、男じゃねえだろうなっ!』 『? そのこちゃん』 『……世祖が言うなら、そうかぁ。おう、なんか飲むか』 『ないない』 『いらねえのか。客用に麦茶くらいあるぞ』 そして電話の先ではガタガタと音がする。カチャンと置かれた音は多分麦茶の入ったコップ。世祖ちゃんが飲む音がする。 『……ここんところ、お前の兄貴はちゃんと家帰ってきてるのか?』 『…そうか。それなら、いいんだけどよぉ』 「世祖、頷いたのかな」 「多分な」 『……あんまり、疲れてるようならうちに来いって言っておけ。兄貴にもな。それか、三条の社長だっけか? そっちでもいいぞ。休めるならな』 「三日月のこと覚えてくれてるのか。有難いな」 「えーっと、コクーンの時にお会いしましたよね」 「そうそう。毛利探偵、依頼人とか何気に覚えてるよなぁ。人覚えるの苦手人間としては尊敬する」 「え? でも#名前2#さんも結構覚えてますよね?」 「仲良くしてたらな。でも、仲良くない人なんか覚えてられねえよ」 そんなもんだろうか。#名前2#さんもかなり人の事色々と覚えてくれてると思うけど。勿論、いい事も忘れて欲しいことも覚えてるような都合のいいものではないが。 『……沖野にも、ちゃんと帰れって言っておくからよ。安心して待ってろや』 沖野? ヨーコちゃんのこと…ではないだろうし。#名前2#さんは驚いた顔をして「うわあああ」と顔をおおった。 「毛利探偵、ずるくない? もうホント、父親みたい。父親じゃないけど」 「それ、父に言ってあげてください。喜ぶと思います」 電話を切って#名前2#さんはそろそろ挨拶したいと財布を取り出した。奢りますと言ったけどやけに嬉しそうな顔で「あの話聞かされたからね。なんかもう嬉しくて」と言ってお金を払ってくれた。 「楽しそうでしたね?」 「……はい。とっても」 ポアロを出たところでお別れ。#名前2#さんは大人っぽいけど、今日は久々に全力で遊んだあとの#名前2#さんみたいだった。ガキンチョよりも子どもっぽい笑顔なんてずるい。まあ、安室さんの反応も面白かったし今日は私もパパたちに電話してみようかな。